メールで相談する 0120-243-032

相続コラム

遺言

法務局での遺言書保管制度のメリット・デメリット

#

遺言書の普通方式には3種類あり、その中で最も用いられているのが「自筆証書遺言」です。自筆証書遺言は名前の通り、自分で書いて作成する遺言書です。
しかし、遺言書を作成したものの、遺言書を紛失してしまったり遺された相続人などが遺言書を見つけられなかったりした場合は、自身が相続したい相手に希望通りの遺産を渡すことができなくなります。

その懸念を解消するための1つの手段が、「法務局での遺言書保管制度」です。
今回、自筆証書遺言を法務局で保管するメリットを紹介します。
また、自筆証書遺言がわからない方も多いため、自筆証書遺言の内容や法務局における遺言書保管制度の申請方法なども解説します。
これから終活を検討されている方はぜひ参考にしてください。

目次

法務局での遺言書保管制度とは

自筆証書遺言の保管は大きく分けて4つあります。

  1. 自身で保管する
  2. 相続人や信頼できる人へ預ける
  3. 弁護士などの専門家に預ける
  4. 法務局に預ける

最も多いのは自身で保管する方法です。しかし、遺言書を「自身で保管する場合」や「相続人や信頼できる人へ預けた場合」は、紛失する可能性や相続発生時に見つけられない可能性があります。

令和2年7月10日に「法務局における遺言書の保管等に関する法律」が施行されたことで、法務局でも保管することが可能となりました。

法務局で、原本を死後50年、データを150年保管してくれるため、間違いなく紛失することはなくなります。

自筆証書遺言とは

自筆証書遺言とは、遺言書の内容をすべて(財産目録以外)自分で書いて作成した遺言書です。

遺言書の普通方式での作成方法には3種類あります。その中でも自筆証書遺言は紙一枚とペンがあれば作成できるため、最もコストが低いというメリットがあります。

しかし、内容の不備があった場合は、遺言書としての効力が発揮できないリスクも持ち合わせています。

公正証書遺言・秘密証書遺言との違い

自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言との違いは大きく2つ挙げられます。

  1. 証人が不要
  2. が不要

自筆証書遺言は自分ひとりで作成できるのに対し、公正証書遺言と秘密証書遺言は二人の証人が必要となります。

「推定相続人」「受遺者」「未成年者」「推定相続人や受遺者の配偶者や直系血族」「公証人と関係がある人」は証人と認められないため、自身で証人となってくれる人を探す必要があります。

また、秘密証書遺言は公証人手数料として11,000円の費用がかかります。さらに公正証書遺言も手数料が必要となります。

一方で自筆証書遺言は原則手数料がかかりませんが、法務局に保管する際には手数料がかかります。

 

【関連記事】夫婦でお互いの生活を守るために遺言を書きあうケースはこちら

自筆証書遺言の申請方法

ここでは自筆証書遺言を法務局に保管申請をする流れを紹介します。

自筆証書遺言作成

まずは自筆証書遺言の作成を行います。誰にどの遺産を相続させたいかを自筆で明記し、署名と捺印を行います。しかし、内容に不備があった場合は、後々遺言書としての効力が発生しない可能性があるため、弁護士等の専門家のサポートを受けるようにしましょう。

保管申請書作成

遺言書の保管申請書の作成を行います。

申請書には遺言者の住所氏名や作成日、出生日や本籍などを記載するため、自身の戸籍謄本と確認しながら作成することをおすすめします。なお申請書に関しては以下のURLからダウンロードできます。

保管申請書:001321933.pdf (moj.go.jp)

保管申請予約

自筆証書遺言の保管申請は、初めに保管の申請の予約を行わなければいけません。予約方法は「専用HPでの申請する法務局の手続案内予約サービス」もしくは「法務局へ電話もしくは窓口予約」の2種類あります。

専用HPでの法務局の手続案内予約サービスは24時間365日利用可能です。

電話もしくは窓口予約をする場合は、自筆証書遺言書保管制度の遺言書を保管してくれる法務局に問合せしてください。

遺言書の保管の申請は,次の3つのいずれかを担当する遺言書保管所であれば,どこででも可能です。ご自身にとって一番便利な遺言書保管所を選んでください。

  1. 遺言者の住所地
  2. 遺言者の本籍地
  3. 遺言者の所有する不動産の所在地

保管申請(遺言者本人が遺言書保管所(法務局)に出向いて本人確認有)

保管申請予約が完了した後は、保管申請を行います。

保管申請をする際は以下の必要書類を準備しましょう。

  1. 遺言書
  2. 保管申請書
  3. 本籍の記載のある住民票の写し(作成後3か月以内)
  4. 本人確認書類(運転免許証・マイナンバーカード・運転経歴証明書・パスポート・乗員手帳・在留カード・特別永住者証明書)
  5. 手数料(1通につき3,900円)

書類の審査が完了した後は、法務局に足を運び、提出します。

保管証受領

保管申請手続きが完了した後は、法務局より保管証が交付されます。

保管証には保管番号が記載しており、遺言書の閲覧や保管の撤回、遺言書の変更手続きをする際に必要となるため、大切に保管しましょう。

 

【関連記事】遺言執行者が行う相続手続きはこちら

法務局における遺言書保管制度メリット

法務局での遺言書保管制度を使用する4つのメリットを紹介します。

紛失・改ざん・隠蔽の恐れがない

法務局に遺言書を保管することで紛失の恐れがなくなります。

自身で保管した場合、どこに保管したか忘れてしまう方も多くいらっしゃいます。

また、相続人にとって不利な内容が記載してある遺言書である場合、相続人が勝手に改ざんや隠ぺいをする可能性もあります。

しかし、法務局に預けることで、遺言者の申請なしでは閲覧することはできないため、上記の不安要素は払しょくすることが可能となります。

遺言書の検認がいらない

自筆証書遺言で作成した遺言書は、家庭裁判所の検認手続きが必要となります。保管制度を使っていない自筆証書遺言は、検認手続きが完了しないと、遺言書の確認はできません。

さらに検認は1か月~2か月ほどの時間を費やすため、相続発生後すぐに遺産承継の手続きができない点が懸念されていました。

しかし法務局の遺言書保管制度で遺言書を保管することで、検認は不要となるため、相続発生後すぐに遺言書の内容を確認し、手続きをすることが可能です。

遺言書が保管されている旨が相続人に通知される

相続発生後、遺言者が希望をしていた場合は、法務局から指定された相続人の1名に対し、保管している旨の通知が届きます。

そのため、相続人は遺言書を探す手間がなくなるメリットがあります。

費用が安い

自筆証書遺言は公正証書遺言や秘密証書遺言より費用を安く作成することが可能です。

秘密証書遺言は一律11,000円であり、公正証書遺言は財産額や遺言書の枚数に応じて最低5,000円~の費用となります。

しかし、自筆証書遺言の作成費用は0円であり、法務局における遺言書保管制度を利用した場合でも3,900円です。

さらに保管料金は発生しないため、3種類の遺言書の中では一番費用を抑えられるという特徴があります。

 

【関連記事】秘密証書遺言のメリット・デメリットはこちら

法務局における遺言書保管制度デメリット

これまで法務局における遺言書保管制度のメリットを紹介してきましたが、デメリットもありますので以下で紹介します。

遺言書の内容については審査してくれない

自筆証書遺言で遺言書を作成した際、「内容があっているか確認してほしい」と思う方も多いでしょう。

そのため「法務局で確認してもらおう」と考えている方もいらっしゃいますが、法務局では遺言書の内容の確認は行いません。

法務局では遺言書の内容ではなく、「自筆で書いてあるか」「署名捺印があるか」「日付の記載があるか」など、最低限様式的に法的な効力があるかを審査してくれるだけです。

そのため自筆証書遺言を作成する際は、一人で作成するのではなく、弁護士などの専門家にサポートを行ってもらうようにしましょう。

本人確認書類の用意が必要

法務局における保管申請をする際は、本人確認書類が必要となります。しかし、運転免許証やパスポートを所有していないという方もいらっしゃるでしょう。

その際はマイナンバーカードを作成する必要がありますが、マイナンバーカードも申請から交付されるまで日数を費やします。

そのため、すぐに法務局における保管申請ができない可能性がある点はデメリットともいえます。

氏名や住所等の変更届が面倒

離婚や引越しなどが要因で氏名や住所を変更する場合は、法務局に変更届を提出する必要があります。

保管手続きができる法務局が決まっている

法務局における遺言書保管制度が利用できる場所は限られています。自筆証書遺言書保管制度を対応してくれる法務局は、「法務省の自筆証書遺言書保管制度の遺言書保管所一覧」を確認し保管できる法務局を選択してください。

まとめ

これまで法務局における遺言書保管制度を紹介しました。

自筆証書遺言のみ適用できる制度ではありますが、遺言書の紛失や改ざん、隠ぺいから守ってくれる効力が見込めます。

さらに相続が開始した後は、相続人に通知を届けることもできるため、被相続人も安心して遺産を相続させることが可能となるでしょう。

しかし、自筆証書遺言の内容を法務局が確認してくれるわけではありません。不備のある内容のまま提出してしまうと、後々相続人同士でトラブルにもなりかねません。

そのため、法務局における遺言書保管制度を利用する前に、弁護士などの専門家に内容について相談してみましょう。

相続コラムTOP