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相続コラム

贈与税

遺贈と死因贈与の違いとは|内容やかかる相続税について

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相続が発生した後は、相続人に財産を継承します。遺言書があれば、遺贈というかたちで遺言通りに財産を引き渡すことが可能ですが、同じような制度として、生前中に財産を贈与しておく「死因贈与」という相続方法があります。

遺贈と死因贈与はどちらも被相続人の生前中に準備が必要という点では共通しています。双方似たような内容であるものの、間違えて使用すると、亡くなった方の意志通りに財産を相続させることができなくなる恐れがあります。

そのため、本記事では、遺贈と死因贈与の違いについて解説します。これから終活を始める方や、遺贈か死因贈与で迷っている方は、ぜひ参考にしてみてください。

目次

遺贈とは

遺贈とは、被相続人(亡くなった方)が残した財産を遺言の内容に則って相続することを指します。被相続人が一方的に、財産を相続してほしい相手を指名できます。

本来、相続が発生した場合、遺言書がなければ相続人全員で話し合いを行い、「誰がどの財産を相続するか」を決めなければなりません。しかし遺言があれば、原則遺言内容に則って財産を相続することが可能となるため、法定相続人以外でも財産を継承することができます。

例えば、被相続人が生前中に介護してくれた第三者に財産を継承させたい場合やNPO法人・公共施設に寄付したい場合、その旨を遺言書に記載することで、遺贈というかたちで財産を無償で渡すことができます。

死因贈与とは

死因贈与とは、被相続人がなくなったことで効力が発生する契約を指します。「私が死んだら〇〇をあなたに贈与します」という内容の契約を、生前の被相続人と受取人の双方が同意することで成立します。

また生前に財産を贈与しておく「生前贈与」とは、生前に財産の継承が起こらない点で異なります。

遺贈と死因贈与の具体的な違い

では遺贈と死因贈与はどう違うのでしょうか。大まかな違いは下記の表の通りです。

項目 遺贈 死因贈与
当事者間の合意 必要なし 必要あり
契約書の必要性 必要なし(ただし、遺言書が必要) 必要(口約束も可。ただし、証明できない)
撤回の可否 撤回可能 撤回可能だが「負担付死因贈与」の場合は認められない
受贈者の年齢 15歳以上は可能 未成年者は親権者などの法定代理人の同意を得るか、もしくは法定代理人が代理をして行う必要がある
税率の違い 0.4%~2% 一律2%
始期付所有権移転仮登記の可否 不可
所有権移転の行いやすさ 遺言執行者がいれば容易 相続人全員と行うため難航しやすい

大きく分けて7つ挙げられます。では具体的な違いについて紹介します。

当事者間で合意が必要か

遺贈は被相続人の意思で相続人と相続財産を決めることができるため、当事者間の合意は必要ありません。遺言書に「誰に何を相続させる」という旨を記載することで、一方的に財産を受け渡すことが可能です。

一方死因贈与は契約のため、受贈者(贈与を受ける人)と合意しなければなりません。例えば、債務がある不動産物件や、田舎の田んぼ、遠隔の土地など、活用が難しい不動産などは契約の段階で拒否されれば死因贈与は成立しません。

契約書を交わす必要があるか

遺贈は契約ではないため、受贈者と契約書を交わす必要はありません。もちろん遺言書として残す必要はありますが、契約書作成などの手間は不要です。死因贈与は契約書を作成しなくても一応成立しますが、契約書がなければ他の人に契約を証明できません。

一般的に死因贈与では生前中に契約書を作成します。

撤回が認められるか

遺贈に関しては生前中であれば被相続人の意思で撤回可能です。自分で作成した遺言書を破棄して作り直すだけで問題ありません。また、死因贈与も贈与者の意思を尊重すべく、原則、撤回可能です。

ただし死因贈与が、贈与者の生活の面倒を見ることを条件に契約した「負担付死因贈与」で、受贈者がすでに介護など生活のサポートを続けていれば撤回することはできません。

受贈者の年齢

死因贈与は法律上契約行為に当たるため、未成年者の単独で締結することはできません。未成年が死因贈与契約を締結する時は、必ず親権者などの法定代理人に同意を得る必要があります。

一方遺贈は、15歳以上であれば代理人を立てる必要もなく受け取ることが法律で定められています。

発生する税金の税率

不動産を相続する場合、名義変更の登記を行わなければならないため、登録免許税が課せられます。一方死因贈与には不動産取得税が必ず課せられます。

遺贈 死因贈与
法定相続人 法定相続人以外 相続人 法定相続人以外
登録免許税 0.4% 2.0% 2.0%
不動産取得税 非課税 土地又は家屋(住宅)3%家屋(非住宅)4% 土地又は家屋(住宅)3%家屋(非住宅)4%

同じく不動産取得税も固定資産税評価額に税率を掛けた金額です。固定資産税納税通知書に評価額が記載されているため、確認してください。なおどちらの税金も、土地と建物に課せられるため納税漏れがないように注意してください。

始期付所有権移転仮登記が可能か

「始期付所有権移転仮登記」とは、被相続人が亡くなった際に不動産の所有権が相続人に移るのを、被相続人の生前に手続きする登記のことです。ただし、この手続きをする方はほとんどいません。

詳しくは司法書士などの専門家に相談しましょう。

所有権移転登記が行いやすいか

不動産を相続する際は、所有権移転登記を行います。一般的には司法書士に依頼することがほとんどです。死因贈与の場合、相続人全員から必要書類を集める必要がありますが、遺贈の場合、生前時に遺言執行者を決めておけば、受贈者と執行者で手続きすることが可能です。

死因贈与で相続人から不動産の所有権移転登記について反対されている場合、スムーズに手続きできない可能性もあります。しかし遺贈に関しては他の相続人は関係ないため、円滑に手続きすることが可能となります。

【関連記事】夫婦の贈与税の基準と対策|生前贈与や非課税対象までわかりやすく解説

遺贈も死因贈与もかかる税金は相続税

遺贈であっても死因贈与であっても課せられるのは相続税です。どちらも贈与者が亡くなってから効力を発揮するものであるため、相続税を支払わなければなりません。

遺贈と死因贈与のどちらがよいかは状況による

財産を特定の人に渡したい時、遺贈と死因贈与のどちらを選べばよいかは、その時の状況によって異なります。いくつか例を挙げて説明します。

家族に知られずに財産を残したい場合は遺贈

相続が発生するまで、他の相続人に財産が見つからないようにするには、「遺贈」がおすすめです。死因贈与と異なり、自身で遺言書を作成しておけば、他の人に見られることはなく、相続発生後に伝えることが可能です。

死因贈与の場合、生前中に受贈者と契約を締結することになります。そのため受贈者が他の相続人に伝えてしまう可能性がないわけではありません。相続人同士の仲が悪く、財産トラブルの懸念がある場合、他の相続人にとって不利益に感じる方もいるでしょう。

遺贈であれば、相続人に内容を知られずに自身の意思を記せるため、相続発生時まで相続人に知られることはありません。

相続放棄の心配があるなら死因贈与

相続人が財産の相続権を放棄する相続放棄の可能性がある場合、死因贈与がおすすめです。例えば、遠隔地の土地や負債を抱えている不動産などは、管理が大変なので相続したくないと考える人もいます。

相続放棄をした人は、財産を引き継ぐ権利を失うだけでなく、納税義務も発生しません。そのため現金や収益を生み出す不動産などの財産でなければ放棄する人も増えています。

しかし死因贈与は、贈与者と受贈者との契約であるため、受贈者から一方的に放棄される心配は低くなります。

【関連記事】贈与税は生活費だと非課税?|課税対象と非課税を具体例付きで徹底解説

まとめ:遺贈と死因贈与、迷ったら専門家へ

今回は、遺贈と死因贈与の違いについて解説しました。遺贈は被相続人が生前中に作成した遺言書の内容通りに財産を継承する方法です。一方死因贈与とは、贈与者(被相続人)と受贈者が生前中に契約を結び、贈与者が亡くなった後に財産を継承する方法です。

双方似たような内容であるものの、契約書の締結の有無や撤回のしやすさなどに違いがあります。またどちらを選ぶべきかは、相続人との関係性を考慮したうえで判断しなければなりません。

相続人同士のトラブルを避けたい方は遺贈を検討し、確実に財産を受け取ってほしい方は死因贈与に向いていると言えます。遺贈や死因贈与で迷っている方や、手続きの方法を知りたい方は、一度専門家へご相談ください。

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