メールで相談する 0120-243-032

相続コラム

家族信託

信託不動産を売買する方法やメリット・デメリットを解説

#

相続で得た不動産の管理方法が分からず放置していると、固定資産税を支払うだけの負の財産となります。そのため売却するか賃貸住宅として貸し出すかを検討する必要があります。

しかしどのように扱えばよいかで悩んでいる方も多いのではないでしょうか。また、不動産を所有している方が認知症となると運用できなくなるため、事前に対策を検討しておく必要があります。

その際役立つのが信託不動産です。この記事では信託不動産の概要と売買する方法、メリット・デメリットを紹介します。

不動産の活用方法が分からない方や、資産を持つ高齢者の方はぜひ参考にしてください。

目次

信託不動産とは

信託不動産とは、運用を第三者に任せ、所有権を受託者に移転した不動産です。高齢になると認知症になる方も多く、自身で判断できなくなりますが、あらかじめ不動産を信託することによって、信頼できる家族のだれかに不動産の管理を任せることが可能です。

このような家族間の信託を家族信託と言います。家族信託を結んだ受託者は、委託者の財産を運用する権利を持ちます。民法上判断能力がなくなったとしても、家族が代わりに不動産を管理できるので、認知症になり管理運用できなくなった時の対策として有効です。

また家族だけでなく、信託会社に依頼することも可能です。信託会社へ依頼する場合、費用が発生しますが、「不動産の管理方法がわからない」「有効な活用方法を一任したい」という方や、「プロに任せたい」という人には向いています。

信託不動産にする場合、委託者と受託者、受益者の3者に分かれ、下記の表のような役割となります。

委託者 不動産の管理を委託する人
受託者 不動産の管理・運用を行う人
受益者 不動産から得られる利益を得る人

信託不動産の売買の形態について

信託不動産を売買する場合には下記の3つの方法が挙げられます。

受益者が直接売買する方法

信託会社や受託者と委託者が取り決めた内容通り受益者に不動産を売却する場合、受託者が売主となります。そのため売買契約や決済などの行為は委託者ではなく、受託者が行う必要があります。

しかし、売買によって得た利益は受益者がもらうことになります。そのため売却利益に対する譲渡所得税は受益者が支払うことになるため注意が必要です。

信託終了後に受益者が売買する方法

委託者が亡くなった後は、信託を終了させるという条項でかつ、信託不動産の所有権は受益者としている場合、信託終了後は受益者が売主となります。

信託契約の内容に不動産の売買について記載が無い場合、受託者は信託不動産を売却ができず、信託期間中は管理しつづけなければいけません。

しかし委託者の死亡によって信託契約が終了すると、不動産の所有権は帰属先として指定された人に移転するので、その帰属先を、当初の受益者と設定しておけば、受益者が売却することが可能となります。

受益権を売買する方法

信託不動産の売却ではなく、受益権を売却することも可能です。信託不動産の売却手続きは受託者が行い、利益は受益者が得るため、受託者にとってはメリットがありません。

信託会社は手数料がもらえる一方、家族信託の場合、受託者に利益は発生しません。受益者から受益権を購入することも可能ですが、売却する受益者にも譲渡所得税が課せられるため、双方、税金を考慮してから売買する必要があります。

【関連記事】相続した不動産を売却して相続税を支払う方法|申告前の計算と節税対策

信託不動産を売買するメリット

では信託不動産を管理するメリットにはどのような点が挙げられるのでしょうか。ここでは2つのメリットを紹介します。

委託者が不動産の継承を自由に設定できる

信託不動産のメリットは不動産の継承を委託者の意思を反映させやすい点です。信託契約を締結できれば不動産の帰属先を特定の家族に決めることが可能となります。

遺言と同様の効果がありますが、遺言書の場合、法定相続人には最低限財産を取得できる遺留分があります。また相続人全員が同意すれば遺言書の内容通りに相続しなくてもよいとされています。

しかし信託契約を結んでおけば、契約内容通りに不動産を継承させることができます。さらに、次の受託者だけでなく、その次(3番目)以降の受託者まで、決めることが可能となるメリットがあります。

不動産の共有回避

信託不動産は受託者1人が所有権を得ることになるため、共有名義を回避することが可能となります。共有名義とは、不動産の持分を複数人で所有することを指し、下記のメリット・デメリットがあります。

メリット デメリット
固定資産税は持分に応じた金額となるため、1人あたりの納税額を抑えることができる 運用するには名義人全員の同意が必要
相続人が複雑化する可能性も高い
  • 運用するには名義人全員の同意が必要
  • 相続人が複雑化する可能性も高い

共有名義の不動産は1人でも反対すると売却できません。またアパートや自宅の建て替えは全員の同意が必要となります。しかし信託不動産にしておくことで受託者1人の権限で運用することが可能となります。

家族信託をしていない場合や遺言書がない場合、相続発生後は遺産分割協議で不動産の相続人を決めていきます。たしかに不動産は財産の中でも大きなウエイトを占め、かつ分割が難しいことから共有名義にされるケースも多いです。

しかし共有名義人が亡くなった後、次の相続人が継承しますが、この流れが続いていくと最終的によく知らない人と共有名義で不動産を所有していることにもなりかねません。

その結果、売却するにも手間と時間がかかり、不動産の自由度が下がることにもつながるため、信託での共有名義の回避が有効です。

【関連記事】不動産の名義変更とは?費用や時間、自分でできるのかを解説

信託不動産を売買するデメリット

一方で信託不動産を管理するには2つのデメリットがあります。

長期間に当たり拘束される

先ほどもメリットでもお伝えした通り、信託不動産は委託者の意思で管理内容を決めることが可能となります。そのため委託者が亡くなった後でも売却できない可能性もあるでしょう。

結果として固定資産税だけを支払い続けることになり、長期間拘束される場合もあります。信託契約を決める際は、委託者と受託者で契約期間を決めておくことをおすすめします。

コストがかかる

家族信託はほとんど費用が発生しない一方、信託会社に不動産の管理を委託した場合、費用が発生します。もちろん会社によって異なるものの、毎月の収益や売却利益の数%と定めている企業が多いです。

とはいえ、手数料が安ければよいということではなく、安心して任せられることがポイントです。そのため信託会社に委託する際は、手数料だけに着目するのではなく、実績や経験、ノウハウを持ち合わせているか見極めてから選ぶようにしましょう。

まとめ:信託不動産で争いのない相続を

今回は信託不動産を売買する方法と、信託契約を結ぶメリット・デメリットを紹介しました。信託不動産は、将来のことを加味した不動産管理を受託者に一任できる方法です。

不動産の売買においては、受託者と受益者が売主となるケースがあります。とはいえ信託内容が全てとなるため、委託者が慎重に考えて決めるようにしましょう。

信託内容次第では、長期間売却できず、税金を支払うだけの不動産にもなりかねません。受託者や相続人などを十分考慮した信託内容にすることを意識するようにしましょう。

相続コラムTOP