メールで相談する 0120-243-032

相続コラム

成年後見

司法書士が成年後見人に選任された場合の費用・申立ての依頼をする流れ

#

成年後見人制度は、成年被後見人(認知症と診断された方など)の財産の管理をしたり、成年後見人が本人の代わりに法律行為を行ったりする制度です。

成年被後見人のご親族が成年後見人に選任されるケースもありますが、成年被後見人を選任するのは家庭裁判所であるため、親族を成年後見人候補者として後見開始の申立てをしたとしても、必ずしも親族が選任されるとは限りません。

親族が成年後見人に選任されない場合は、司法書士などの専門家が成年後見人に選任されることがあります。

今回は司法書士が成年後見人に選任された場合の費用について解説します。また申立てを司法書士に依頼する流れ、他の専門家との違いについても紹介するため、これから成年後見人制度の利用を検討している方はぜひ参考にしてみてください。

目次

司法書士が成年後見人に選任された場合にかかる費用

後見開始の申立てを依頼する費用と、司法書士が成年後見人に選任された場合の司法書士への報酬について解説します。

後見開始の申立ての依頼にかかる費用

司法書士に後見開始の申立てを依頼した場合、当然ですが、司法書士に支払う費用がかかります。司法書士によって費用は異なるため、どの程度になるか、依頼する際に確認してみましょう。

自身で行う場合は、実費のみの負担となりますが、申立てには専門知識が必要なため、時間がかかる可能性が高いです。

実費として挙げられる具体的な項目と費用は下記の表の通りです。

申立て手数料及び登記手数料 3,400円分の収入印紙(注1)
後見申立て費用 3,270円分の切手
保佐・補助申立て 4,210円の切手
戸籍謄本の交付手数料(被後見人分) 450円
住民票または戸籍附票の交付手数料(被後見人分) 300円(注2)
「登記されていないことの証明書」の交付手数料(被後見人分) 300円
住民票または戸籍附票の交付手数料(後見人分) 300円
商業登記事項全部証明書の交付手数料(後見人分) 600円
不動産の登記事項全部証明書の交付手数料 600円
不動産の固定資産評価証明書の交付手数料 400円
診断書の発行手数料 数千円程度
鑑定費用(医師の判断が必要な場合) 10万円~20万円

(注1)保佐人・補助人に代理権を付与する場合、別途800円分の収入印紙が必要

(注2)各自治体により異なります。

成年後見人が選任された後の報酬額

報酬額の基準は法律によって決まっているわけではありませんが、司法書士が成年後見人となり、通常の後見事務を行った場合の基本報酬額の目安は、月あたり2万円です。ただし、管理財産額などによって下記の表の通り報酬額が高くなります。

管理財産額 基本報酬額
1,000万円~5,000万円以下 月額3万円~4万円
5,000万円以上 月額5万円~6万円

実際の報酬額は家庭裁判所が上記の金額を基準として定めます。被後見人の資産状況や地域の物価、後見事務内容などを考慮して決まるため、上記の価格から上下します。

【関連記事】成年後見人の報酬はいくら?相場や申立てにかかる費用を紹介

成年後見人に司法書士が選任される割合

最高裁判所事務総局家庭局が発表した令和3年1月~12月までの「成年後見関係事件の概況」によると後見人に選任される親族の割合は下記の表の通りとなっています。

親族 19.8%
親族以外 80.2%

では親族以外の場合、どのような方が後見人になるのでしょうか。

司法書士 37.7%
弁護士 25.9%
社会福祉士 18.1%
社会福祉協議会 4.5%
行政書士 4.1%
税理士 0.2%
社会保険労務士 0.3%
精神保健福祉士 0.2%
市民後見人 1.0%
その他の個人 0.4%
その他の法人 7.7%

引用:成年後見関係事件の概況

ご覧のように、司法書士が最も多い割合を占めています。30%以上の割合で司法書士が成年後見人に選任されていることがわかります。

成年後見人に選任する専門家の違い

成年後見人には専門家が選任されるケースが多く、特に「司法書士」「弁護士」「社会福祉士」は高い確率で選ばれています。ではそれぞれどのような違いがあるのでしょうか。

ここでは3つの専門家の違いについて解説します。

申立て手続きとあわせて依頼するなら司法書士

司法書士は裁判所提出書類作成の専門家です。申立て手続きの段階から補助してくれるメリットがあります。

法的手続きに強い弁護士

弁護士は法律に関するスペシャリストです。そのため成年被後見人に法的トラブルが発生した場合、弁護士が力を発揮します。

例えば、成年被後見人が相続人となる相続を控えており、他の相続人とトラブルに発展して裁判になる可能性が高いケースや、第三者と法的紛争があり、訴訟が予想される場合などです。

福祉に関する知識が豊富な社会福祉士

社会福祉士は福祉の相談援助に関する高度な専門知識・技術を有し、福祉や医療の相談援助の場において重要な役割を担います。

成年被後見人や関係者からの相談に応じ、必要な助言や利用可能な制度・サービスの紹介をはじめ、サービスの利用調整や関係者間の連絡など、その抱える課題を解決するためのサポートを受けられるというメリットがあります。

安心して司法書士に任せられる理由

司法書士が成年後見人に選任される割合が高いという説明がありましたが、なぜなのでしょうか。その点を詳しく解説していきます。

多くの司法書士がリーガルサポートに登録しているから

「公益社団法人 成年後見センター・リーガルサポート」に登録している司法書士が、後見申立ての候補者となるケースが多いです。

リーガルサポートとは、成年後見制度の利用の促進や啓発活動、そして第三者後見人の供給源として司法書士を中心に設立された公益社団法人です。日本の司法書士の約1/3が登録しています。

裁判所とリーガルサポートへの業務報告が義務付けられているから

後見人となった方は、1年に1回程度、裁判所へ成年被後見人の財産の管理状況や収支を報告しなければなりません。しかし司法書士が成年後見人となった場合、裁判所への報告に加え、半年に1度リーガルサポートへの報告も義務付けられています。

裁判所とリーガルサポートのダブルチェックが行われるので、成年被後見人の親族としては、財産がしっかり守られることが確認できるため、安心して司法書士に任せられます。

後見開始の申立てを司法書士に依頼する流れ

では、申立てを司法書士に依頼し、成年後見人が選任されるまでの流れを紹介します。

司法書士に相談

先ほど述べた通り、司法書士は裁判所提出書類作成の専門家です。司法書士にサポートしてもらうことで申立てや選任後の流れを円滑に進められます。

ご自身や親族について後見開始の申立てを考えている方は一度相談してみましょう。

司法書士の指示で必要書類を集める

依頼後は司法書士の指示で必要書類を集めます。また委任状で司法書士に取得してもらえる書類もあるため、負担が軽くなります。必要な書類は下記の通りです。

  • 被後見人の戸籍謄本
  • 被後見人の住民票または戸籍附票
  • 登記されていないことの証明書
  • 診断書
  • 不動産の登記事項全部証明書
  • 不動産の固定資産評価証明書

司法書士によって後見開始の申立書類が作成される

必要書類の準備ができた後は、司法書士に成年後見人の申立書類を作成してもらいます。この際、申立人と司法書士で、戸籍や財産状況、毎月の支出や収支予定などを確認しながら作成します。

成年後見人になった後のスケジュールや財産管理方法なども一緒に打合せしておくと選任後の手続きがスムーズになります。

また、申立書類の作成にも費用が発生しますので、支払いのタイミングなども確認しておきましょう。

家庭裁判所で申立て

書類作成後は、家庭裁判所へ申立てを行います。申立ての際は、司法書士が同席するため、初めて申立てを行う方でも心配ありません。

申立て後の流れ

申立て後は、裁判所で「書類の審査」「申立人等の聞き取り」「調査官の調査や親族への聞き取り」などの審理が行われます。調査の終了後、家庭裁判所が適任とされる後見人を選出します。

審判が完了した後、申立人と被後見人などには書面で審判内容を知らされます。候補者である司法書士が必ず後見人になるとは限りません。さらに誰を成年後見人に選任するかに関しては不服申立てはできないため、注意してください。

【関連記事】遺産相続で成年後見人が必要なケースは?選ぶ流れや費用、注意点を解説

まとめ:成年後見人の申立ては司法書士に相談しましょう

今回は、成年後見人に司法書士が選任された場合の費用やメリット、他の専門家との違いについて解説してきました。後見開始の申立ての手続きの段階から依頼することができ、申立て後は成年後見人として生活のサポートをしてくれます。

また、他の専門家と違い、リーガルサポートのチェック機能があることから、安心して任せられるため、司法書士が後見人になることは非常に多いです。これから成年後見人の申立てを検討している方は、司法書士に相談してみましょう。

相続コラムTOP