相続税相続手続
相続手続きの流れと進め方|時効の前に手順に合わせてスケジュールを押さえよう
相続手続きはほとんどの方が初めてであるため、どのような流れやスケジュールとなるか分からない方も多いのではないでしょうか。相続は発生してから10カ月以内に申告と納税をしなければいけません。
期限が過ぎてしまうと配偶者控除などの特例が適用できず、納税額が高額となるだけでなく、延滞税などのペナルティーも課せられます。
そのため相続手続きを行う方は事前に相続手続きの流れを理解しておくべきでしょう。本記事では相続手続きの流れと進め方を紹介します。また手続き内容とスケジュールも紹介するため、これから相続を控えている方はぜひ参考にしてください。
目次
相続手続きの全体の流れ
相続の発生から納税までの流れは以下の通りです。
期限 | 手続き名 | 内容 |
---|---|---|
7日以内 | 死亡届の提出 | 市区町村へ死亡届を提出する |
10日以内 | 厚生年金 | 書類を年金事務所か年金相談センターに提出 |
14日以内 | 国民年金 | 未支給年金請求の届出 |
世帯主の変更 | 市区町村へ世帯主変更届の提出 | |
金融機関への連絡 | 被相続人の口座凍結 | |
生命保険金の受け取り | 保険会社へ連絡 | |
公共料金や各種サービスの変更と解約 | 水道や電気、ガス会社へ連絡 | |
おおむね1カ月以内 | 遺言書の確認 | 遺言書の有無の確認 遺言書の検認手続き ※自筆証書遺言・秘密証書遺言があった場合 |
3カ月以内 | 財産調査 相続人の確定 |
相続財産の合計の確認 法定相続人の確定 相続放棄と限定承認の確認 |
4カ月以内 | 被相続人の準確定申告 | 被相続人の生前時に取得した所得税の納税業務 |
10カ月以内 (7カ月~8カ月がおすすめ) |
遺産分割協議 | 相続人全員で遺産分割の話し合いと遺産分割協議書の作成 |
相続財産の名義変更手続き | 法務局などで不動産の登記 | |
10カ月以内 | 相続税の申告・納税 | 税務署で相続税の申告と納税 |
遺産分割協議は10カ月以内と定められているものの、申告と納税までの期間を考慮すると、2カ月~3カ月前までには完了している必要があります。余裕を持った日数でないと、依頼する司法書士などへの報酬額も高くなるデメリットがあります。
また相続で取得した不動産の登記も法務局に申請してから1週間から2週間前後かかります。どの作業も日数に余裕を持ちながら手続きしましょう。
相続手続きから受け取りまでの流れ
相続手続きの中で特に重要なポイントについて紹介します。
遺言書の有無を確認
相続が発生した後は、遺言書の有無を確認しましょう。遺言書には「誰がどの財産を相続するか」について明記されています。一般的には遺言書に基づいて財産を相続します。
遺言書には自筆証書遺言と公正証書遺言、秘密証書遺言の3種類あり、保管場所はそれぞれ異なります。
遺言書 | 保管場所 |
---|---|
自筆証書遺言 |
|
公正証書遺言 |
|
秘密証書遺言 |
|
上記のうち、法務局と公証役場で保管した場合、遺言書の検認手続きが不要となります。遺言の検認とは家庭裁判所で遺言書の形状や内容を確認し、偽造や変造を防止する手続きのことを指します。
検認は申請してから1カ月から2カ月前後の日数を費やします。
相続人の調査と法定相続人の確定
遺言書の確認が完了した後、または並行して相続人の調査を行い、法定相続人の確定を行います。相続人の調査は被相続人の戸籍謄本から過去を遡り、誰が法定相続人になるか調べます。
一般的には配偶者と子どもが該当しますが、隠し子や前妻との間に子どもがいる場合も法定相続人に該当します。
相続財産の調査
相続人の調査と同時に相続財産の調査を行い、財産合計額を算出します。財産の調査は相続税の計算と遺産分割協議時に必要となります。
財産の調査は税理士へ依頼するのが一般的ですが、事前に各企業や金融機関へ存在の有無を確認しておきましょう。調査項目は以下の通りです。
調査項目 | 調査方法 |
---|---|
預貯金 | 金融機関へ問合せ |
不動産 | 不動産鑑定士や市区町村へ相談する |
生命保険 | 保険会社へ連絡する |
株式、投資信託、有価証券 | 証券会社などに確認する |
債務 | 借入している金融機関へ確認する |
貴金属や自動車、ゴルフ会員権など | 鑑定士やゴルフ場へ確認する |
相続の方法を選ぶ
相続人となった人は「単純承認」「相続放棄」のどちらかを選択する必要があります。単純承認とは通常通り財産も負債も引き継ぐことです。しかし負債を引き継ぎたくない方も多くいます。
その際は相続放棄を行います。相続放棄は名前の通り相続に関する権利を全て放棄することです。財産も引き継ぐことも無ければ、負債を引き継ぐこともありません。
その他プラス財産の範囲内に限りマイナス財産を相続する「限定承認」もありますが、ほとんど使用されておらず、2つのどちらかになります。
遺産分割協議の実施
相続人と相続財産が確定した後は遺産分割協議を行います。遺産分割協議とは相続人全員が集まって財産の分け方を話し合うことです。
相続人が1人でも参加しなかった場合は無効となります。また遺産分割協議は相続において相続人同士がトラブルになる可能性が最も高いです。事前に弁護士に仲介に入ってもらうことも可能です。
遺産分割協議書を作成する
遺産分割協議が完了した後は話し合いの内容を一つの書類にまとめます。「誰がどの財産を相続するか」を書類に明記し、相続人全員の署名捺印を行います。
不動産の名義変更・口座解約をする
遺産分割協議書ができた後は、相続手続きを行います。不動産の名義変更登記や金融機関の口座解約手続きには遺産分割協議書が必要です。遺言書がある場合は遺産分割協議書は不要のまま登記可能です。
相続税を申告する
最後に相続税の申告を行えば完了です。申告は本住所を管轄している税務署で行います。
【関連記事】相続に必要な確定申告・準確定申告について詳しく解説!
財産相続手続きをしなかったら時効
相続税の時効は申告期限から5年もしくは7年となります。申告内容を偽装や隠蔽していた場合は故意に該当することもあるため、7年と設定されています。
その他にも相続関連にはさまざまな手続きに時効があります。詳しくは以下の表を確認してください。
相続手続き | 時効期限 |
---|---|
相続放棄 | 相続発生から3カ月以内 |
相続回復請求権 |
|
相続税申告 | 相続税の申告期限から5年または7年 |
遺留分侵害額請求権 |
|
なお、相続登記に関しては期限はありません。しかし相続登記していないと将来的に不動産の売却や新築、建て替えができない状態にもなりかねないため、早めに登記しておくことをおすすめします。
相続手続きは自分で進めるには時間がかかる
相続手続きは自分で進めることも可能ですが、多くの方は初めての作業であるため、時間と労力を費やします。特に相続税の申告は10カ月以内と定められており、期限が過ぎるとペナルティーが課せられます。
税理士や司法書士などに依頼することで報酬額が発生するものの、費用に合った作業を行ってくれます。さらに節税方法や適用できる特例も紹介してくれるメリットがあります。
相続手続きの流れで注意したいこと
これまで相続手続きの流れを紹介してきましたが、手続きをする上で注意する点もあります。ここでは注意ポイントを紹介します。
必要に応じて手続きが増える
相続の全体的な流れを紹介しましたが、場合によってはその他にも手続きが必要となるケースもあります。例えば相続人が未成年者であれば、他の相続人との中立な立場である特別代理人の選任を行う必要があります。
また認知症など社会的に判断能力が無いと判断されている相続人の場合、成年後見人を選任して相続手続きを行います。
さらに相続人が海外に住民登録をしている方は、日本領事館や大使館などで、発行の申請などを行います。つまり相続人の状況によって手続きも増える可能性があると理解しておきましょう。
書類は手続きによって異なる
相続手続きの流れを紹介しましたが、それぞれの相続手続きの書類は異なります。さらに必要な書類は数多くあるため、途中でどの手続きに何の書類を使用するか分からなくなる方も多いです。
そのため相続手続きを行う際は、司法書士や税理士に依頼し、必要書類リストなどを作成してもらうようにしましょう。
相続トラブルが発生する
相続のトラブルは後を絶ちません。兄弟姉妹で仲が良かった、家族間の関係が良かったという場合であっても、いざ大きな財産が目の前にあると相続人同士でトラブルになる可能性も高いです。
トラブルが発生した際はすぐに弁護士へ相談しましょう。少しでも早く解決しないと納税期限に間に合わない可能性も高まります。
【関連記事】相続税に関する相談は税務署?無料相談先や目的別の窓口や手続き法を紹介
まとめ:相続の流れを確認し抜け漏れのない手続きを
今回は相続手続きの流れについて解説してきました。相続は発生してから10カ月以内に納税と申告を行わなければいけないうえに、その期間内で行う作業は数多くあります。
初心者の方が相続手続きを自身で行おうとすると、期限までに間に合わない可能性も高くなるでしょう。そのため相続が発生した後は、即座に専門家へ相談することをおすすめします。
カテゴリ