相続税戸籍
不動産の名義変更とは?費用や時間、自分でできるのかを解説
不動産の所有者が変わった際は名義変更を行わなければいけません。名義変更をしない状態はさまざまなリスクがあり、最悪の場合は不動産を失う可能性もあります。
相続や売買によって不動産を取得した場合の名義変更手続きについて具体的な内容を知らない方も多いのではないでしょうか。ここでは不動産の名義変更の概要や名義変更が必要なケースなどを紹介します。自身が不動産を取得する場合、名義変更が必要であるか判断できるようにしましょう。
目次
不動産の名義変更とは?
不動産の名義変更とは所有権移転登記により、所有者を変更することを意味します。土地や建物には全て所有者が設定されます。しかし、相続や売買、贈与などによって所有者が変わる場合は、法務局にて名義変更の登記手続きを行わなければいけません。
登記変更をしないままにすると以下のようなリスクがあります。
- 将来、不動産の売却や建て替えができない
- 不動産の固定資産税納税通知書が届く
- 前所有者が自由に活用できてしまう
所有権は不動産を所有している証明です。しかし名義変更しないということは所有者が変わっていないことを意味します。不動産の活用は所有者しかできないため、前所有者が売却してしまう可能性もあります。
そのような事態を避けるためにも不動産の名義変更を行い第三者に示すようにしましょう。
名義変更にかかる時間
不動産の名義変更にかかる時間はおよそ1~2週間ほどです。当日に完了することはほとんどありません。不動産の登記は法務局で審査を行ったうえで完了します。そのため法務局が混んでいる時は上記の日数よりかかる場合もあります。
不動産を購入したからといっても名義変更が完了しなければ所有者が変更にはなりませんので早めに手続きしましょう。
名義変更にかかる費用
不動産の名義変更をする際は以下の費用が必要です。
- 登録免許税
- 印鑑証明書や住民票の取得費用
- 司法書士報酬額
上記の中で最も費用が大きいのは登録免許税です。登録免許税は不動産の評価額に税率を掛けた値を納税しなければいけません。税率は以下の通りです。
<土地の場合>
内容 | 税率 | 軽減税率 |
売買 | 2% | 1.5% (令和5年3月31日までの間に登記を受ける場合) |
相続 | 0.4% | – |
贈与・離婚 | 2% | – |
<建物の場合>
内容 | 税率 | 軽減税率 |
売買 | 2% | 0.1%~0.3% |
相続 | 0.4% | – |
贈与・離婚 | 2% | – |
土地の不動産評価額が3,000万円、建物の評価額が5,000万円で、相続による不動産の名義変更の場合「3,000×0.4%+ 5,000万円× 0.4%=32万円」の登録免許税を納税しなければいけません。
さらに売買となるとより税率は高くなるため登録免許税が大きくなります。また司法書士への報酬額は司法書士によって異なり、目安としては10万円程度です。
【関連記事】相続に税理士は必要?税理士の必要なケースと選び方はこちら
不動産の名義変更が必要なケース
こちらの動画では不動産相続の名義変更をしない場合のデメリットや相続税との関係について解説しているので気になる方は是非ご確認ください。
ここからは不動産の名義変更が必要なケースを4つ紹介します。
不動産の相続
相続により不動産を取得した場合は、遺産分割協議書をもとに名義変更を行います。遺産分割協議書とは相続人全員が被相続人の財産の分け方について話し合いを行い、分割割合を書面に残したものです。
遺産分割協議書がなければ、不動産を相続した証明ができないため、名義変更を行う際に必要な書類です。相続が発生したあとは自動で名義変更されると思われることもありますが、法務局で登記手続きしなければ亡くなった方のままの不動産となります。
その場合、不動産を売却することもできなければ、再建築することもできません。そのため相続が発生し、遺産分割協議書の作成が完了した後は即座に不動産の名義変更を行うようにしましょう。
不動産の贈与
不動産を贈与した場合も名義変更が必要です。贈与税は年間110万円以上の財産贈与を行うと課税対象となるため、不動産の場合は持分を贈与するケースが多いです。
例えば5,000万円の評価額である不動産であれば、110/5000の持分を贈与するということです。持分を贈与する場合も名義変更が必要となります。
不動産の売買
不動産を売買によって取得した場合は、所有者移転登記による名義変更が必要です。前所有者のままにすると売却されてしまう可能性があります。不動産の売買は、売買契約と決済に分かれ、決済時に名義変更手続きを行います。
売買契約時に司法書士へ必要書類を提出し、決済時に登記完了する流れが一般的です。そのため決済と同時に登記完了するのが一般的な流れです。
離婚後の財産分与
離婚する際は財産分与をすることが一般的です。夫婦で築いてきた財産を離婚時に精算しますが、不動産の所有者も変わる場合は名義変更が必要です。
名義変更する際は、相続や売買と同様に司法書士へ依頼しましょう。
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不動産の名義変更は自分でできる?
不動産の名義変更は司法書士へ依頼するのが一般的ですが、自身で手続きすることもできます。ここでは不動産の名義変更を自分で行う場合の必要書類を説明します。
不動産の名義変更に必要な書類
自身で不動産の名義変更を行う場合、それぞれのケースに合わせた必要書類が必要です。
名義変更の種類 | 必要書類 |
相続による名義変更 |
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贈与による名義変更 |
|
売買による名義変更 |
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離婚による名義変更 |
|
それぞれの必要書類について解説します。
登記原因証明情報
登記原因証明情報とは、不動産の権利を証明する情報のことを指し、名義変更が発生した理由(売買・相続など)が明記されています。名義変更の際に必要となる書類です。
登記識別情報
不動産を取得した際に発行される書類であり、昔の書類であれば権利証とも言われます。平成17年以降には登記識別情報となり、名義変更に必要な書類です。
固定資産評価証明書
名義変更には必要ありませんが、登録免許税を算出する際に必要な書類です。
住民票
名義変更する方の住民票が必要です。もちろん前所有者の方も住民票も必要となり、基本的には取得してから3か月以内のものが好ましいです。
印鑑証明書
印鑑証明書は前所有者と新しい所有者の書類が必要です。ただし相続の場合は相続人だけで問題ありません。印鑑証明書は住民票と同様に3か月以内のものが必要です。
遺産分割協議書
相続によって不動産の名義変更を行う際は遺産分割協議書が必要です。遺産分割協議書が不動産を相続した証明書となります。
本人確認書類
運転免許証やマイナンバーカードを用意しましょう。
実印
登記する際は実印を押印し、印鑑証明書との適合確認を行います。
売買契約書
売買によって名義変更する場合は、不動産の売買契約書が必要です。
不動産の名義変更は司法書士に依頼
不動産の名義変更は司法書士へ依頼したほうがスムーズに手続きを行うことが可能です。
自身で行う場合は、必要書類を集め、法務局で複雑な手続きを行わなければいけません。登記変更を行ったことがない方であれば書類不足や登記方法がわからず、多くの時間を費やしてしまいます。
さらに不動産の登記は一度間違えてしまうと、簡単には戻せないうえに、多くの税金の課税対象にもなりかねません。
しかし登記のプロである司法書士へ依頼すれば、委任状である程度の書類を集めてくれるうえに、すぐに手続きを完了させてくれるといったメリットがあります。
もちろん依頼するための費用は発生してしまいますが、間違いなく登記を行いたい方は司法書士へ依頼したほうが良いでしょう。
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まとめ:不動産の名義変更を放置するとデメリットがたくさん
今回は不動産の名義変更について解説してきました。誰の不動産であるかを第三者に示せるようにしておかないと、他の所有者に悪用されてしまう恐れがあるため、不動産を取得した場合は即座に所有権移転登記を行う必要があります。
名義変更は自身で行うことも可能ですが、手間と労力を考慮すると、司法書士などの専門家へ依頼することをおすすめします。一度間違えて登記すると再度登記し直さなければならず、費用だけでなく税金も課せられるため、プロに任せるようにしましょう。
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