相続税
相続の寄与分とは?寄与分が認められる条件を解説!
寄与分は他の相続人より多く遺産を相続できる制度です。しかし誰でも寄与分が認められるわけではないため、どのような条件が必要か事前に理解しておく必要があります。
本記事では相続における寄与分の概要と認められる条件について解説します。本記事を参考にして、これから相続を控えている人は寄与分の権利に該当するかを判断してください。
最後には2023年度の遺産分割制度についても解説するため、ぜひ参考にしてください。
目次
寄与分とは?
寄与分とは、相続人が被相続人の生前中に財産の増加または維持などに尽力した方に対し、貢献度合に応じた遺産を相続時にプラスする制度のことを指します。寄与分を得られる方は他の相続人より多く遺産を相続できるということです。
一般的な相続は、遺言書に基づいて遺産分割を行います。遺言書がない場合は法定相続分に応じた割合に定めることが多いです。しかし寄与分は被相続人に対し「介護などを行っていた」「相続税対策の手伝いをしていた」「資産運用をしていた」など貢献していた相続人に対し、民法上の貢献度合に応じた遺産分割が可能となります。
つまり被相続人は、子供達の中でも面倒を見てくれた相続人に多く遺産を相続できることでもあります。しかし簡単に寄与分ができるわけではなく、条件に該当した場合のみとなるため、詳しくは次の項で解説します。
寄与分の3つの条件
寄与分が認められるためには3つの条件をクリアしている必要があります。
共同相続人である
寄与分を受け取ることができる人は、相続人となる人(共同相続人)に限定されます。そのため被相続人に貢献していた方であれば誰でも対象となるわけではありません。介護などを行っていた近所の方や、資産活用の手伝いをしていた親族などは相続権がないため該当しません。優先順位に則った相続人でなければ寄与分は認められず、また配偶者も対象外であるため、一般的には子供などが該当することが多いです。
被相続人の財産の維持・増加に貢献した
寄与分が認められるのは被相続人の財産維持と増加に貢献したことが条件となります。具体的には「株や投資信託などの資産運用で財産増加を行った」「不動産投資を行い財産を増やした」などが挙げられます。
あくまで財産の増加と維持などを行った方が対象者となるため、「週に一度顔を見に行った」「話相手になった」程度の精神的満足は対象外となります。
また不動産投資を現金で行った場合は資産評価額が下がるため、財産減少と思われることもありますが、相続税対策や土地の有効活用など財産維持のための行為と判断されることから寄与分が認められる場合が多いです。
しかし寄与分には明確な境界線がなく自分で判断するのは難しいため、詳しくは弁護士に相談するようにしましょう。
特別の寄与を行う
寄与分は財産の維持・増加だけでなく、特別な寄与を行った相続人も対象となります。特別な寄与とは下記のような法律上義務付けられた範囲を超えるものが該当します。
- 「直系血族及び同居の親族は、互いに扶け合わなければならない。」(民法730条:親族間の互助義務)
- 「夫婦は同居し、互いに協力し扶助しなければならない。」(民法752条:夫婦の協力扶助義務)
- 「直系血族及び兄弟姉妹は、互いに扶養をする義務がある」(民法877条:親族の扶養義務)
つまり、血縁関係のある人同士は互いに協力することが大前提であるため、上記以上の貢献が求められます。具体的な例としては以下のケースが挙げられます。
被相続人の介護を5年間行った。
老人ホームに依頼するとひと月20万円前後の費用が発生し、トータルで1,200万円ほどの支出削減につながったため、特別な寄与として認められた。 |
血縁関係がある方であっても5年間という年数と1,200万円という費用削減が大きなポイントとなりました。特別な寄与も明確なラインがないため、裁判所によって見解が異なります。
しかし上記の例では客観的に見ても大きな支出を抑えることにもつながったため、法律上義務付けられた範囲を超えたと判断できます。
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寄与分の5つの類型
寄与分が認められるケースは大きく5つに分かれます。自身が寄与分に該当するか見てみましょう。
家業従事型
家業従事型とは被相続人の家業を手伝っていた方などが該当します。被相続人が経営している飲食店を10年間無償で手伝っている場合などが当てはまります。
家業従事型のポイントは無償であることです。給与をもらっている場合は寄与分の対象外となります。現実では起こりにくいため家業従事型に該当する方はほとんどいません。
療養看護型
療養看護型とは被相続人の療養をしていた場合に該当します。例えば看護師や介護士を雇った場合、数年間で200万円近い支出を費やすところを無償で看護を行っていたといったケースが挙げられます。
ただし看護のために1日1時間や2時間程の程度では寄与分は認められないことが多いです。同居人などが常に被相続人の看護をしており、看護師を雇わずに支出を抑えたということが重要です。
ただし血縁関係のある同居人は法律上義務付けられた範囲に該当することも多いため、同居人であれば良いとは言いがたいです。療養看護型で寄与分を認めてもらいたい方は、どれくらいの費用を抑えられるかを明確にしておく必要があります。
出資型
出資型とは被相続人が住むための自宅購入資金を提供した場合などに該当します。この場合の出資は被相続人が経営する企業などは該当せず、個人に対しての出資です。また具体的な金額は定まっていないものの、ある程度の出資でなければ寄与分は認められないことが多いです。
財産管理型
財産管理型とは、被相続人の財産維持や増加に貢献した場合に該当します。資産運用だけでなく、被相続人が所有している賃貸物件などの清掃や手入れなどを行っていた場合なども該当します。財産管理型は寄与分の中で最も認められることが多いケースです。
扶養型
扶養型とは被相続人が生前中に面倒を見ていた場合などが該当します。面倒を見るラインは明確ではないものの、被相続人がケガや病気で仕事ができない状態となり、収入を確保できないため生活費の面倒を見てあげたなどのケースが当てはまります。
扶養型の注意点としては被相続人が生活できないほどの収入であったことがポイントです。さらに同居人の場合は互いに扶養しなければいけない義務があるため、条件としては非常に厳しい寄与分の事例となります。
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2023年から遺産分割の制度が変更
2021年に民法改正が行われ、2023年に施行されます。ここではどのような点が改正されるか説明します。
具体的相続分とは
本来、相続分は遺産分割協議を行ったうえで財産割合を決めていきます。遺産分割協議とは相続人全員で話し合いを行い、誰がどの財産を相続するかを決め、遺産分割協議書としてまとめることです。
しかし遺産分割についての期限が定められていないため、いつまでたっても被相続人の不動産所有者が不明確な状態が続いていました。
特に土地が該当するケースが多く、固定資産税等を納税したくなかったり手続きが面倒だったりするためです。今回の法改正により、寄与分の確定に期限が設けられました。
法改正後の変更点
民法改正では相続発生時から10年経過した遺産分割は法定相続分に則って行うというルールが定められました。これにより所有者が分からない土地を削減できることにつながります。ただし以下の場合は例外となります。
- 10年以内に相続人が遺産分割請求を家庭裁判所に申立てした場合
- 相続開始時から10年の期間満了前の6か月以内の間に、死亡していたことの事実確認ができないなどのやむを得ない理由で遺産分割請求ができない事由が相続人にあった場合、その事由消滅したときから6か月経過する前に当該相続人が家庭裁判所に遺産分割の請求をしたとき。
上記の改正により早期に遺産分割を促すことになるだけでなく、10年経過後の遺産分割は相続人にとって不利益になることもあるため十分な注意が必要です。
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まとめ:寄与分の相談はお早めに
今回、相続の寄与分制度について解説してきました。寄与分を受け取れる方は他の相続人と比べて大きな財産を継承できる一方、被相続人の生前時に十分な財産管理や看護などが必要となります。寄与分は明確なラインがなく裁判所の判断に委ねられます。
ただし、弁護士などの専門家であれば、多くの経験からある程度のラインがわかります。より寄与分について具体的な内容を知りたい方や、自身が該当するか知りたい方は専門家へ相談してみましょう。
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