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相続コラム

相続放棄

相続税の非課税の限度額について詳しく解説

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令和2年度の死亡者数は 1,372,755人となっており、その内8.8%の120,372人が相続税の申告書の提出に関わりました。つまり、91.2%は相続税を納税する必要がなかったことになります。
相続税は亡くなった方(被相続人)の遺産総額によって、相続人が納税者となるのか確定しますが、どれくらいの相続遺産であれば納税しなくて済むのか疑問に思う方もいらっしゃるでしょう。
ここでは相続税の納税が必要ない非課税限度額に着目して解説します。これから相続を控えている方はぜひ参考にしてください。

目次

相続税が非課税になる場合

相続税は被相続人の遺産の合計額を算出してから基礎控除額を差し引き、その金額を法定相続分に按分します。最後に税率を掛け、控除額を差し引いた額が納税額となります。

  1. 遺産合計額を算出する
  2. 基礎控除額を差し引く
  3. 法定相続分に按分
  4. 税率を掛け控除額を差し引く

つまり、遺産総額より基礎控除額の方が大きい場合は、相続税は非課税となります。また基礎控除額を超える財産があったとしても、「非課税財産の価格」や「債務控除」などもあるので、しっかり計算すれば、相続税が非課税になる場合があります。

相続税の基礎控除額の計算方法

相続税の基礎控除額は下記の計算方法で算出できます。
基礎控除額=3,000万円+(600万円×法定相続人数)

法定相続人は被相続人の財産を相続できる方が該当し、「第一順位」「第二順位」「第三順位」に分けられています。

第一順位 子供、代襲相続人(直系尊属)
第二順位 親、祖父母(直系尊属)
第三順位 兄弟、代襲相続人(傍系血族)

被相続人の配偶者は常に法定相続人となり、第一順位の法定相続人が相続人となります。一般的な家庭であれば、配偶者と子供などが法定相続人となります。第一順位の法定相続人がいない場合は、配偶者と第二順位の法定相続人となります。さらに第二順位の法定相続人がいなければ配偶者と第三順位の法定相続人が相続人となります。また法定相続人がいない場合は、被相続人の財産は国庫へ寄贈となります。そのため法定相続人が最低一人いる状態でなければ相続税は課税されません。つまり、基礎控除額の最低限度額は3,600万円となるということです。

遺産総額の計算方法

相続税の遺産総額は財政調査により算出します。財政調査とは被相続人が残した遺産を調査し、遺産の合計額を算出することをいいます。また先ほどもお話した通り、非課税財産の価額と債務控除は遺産総額から差し引くことが可能です。
相続税が課せられる遺産額=遺産総額-非課税財産の価額-債務控除
この時点で遺産総額より非課税財産の価格と債務控除の方が大きければ、相続税は課せられません。また、遺産総額を算出した後に基礎控除額を差し引くため、遺産総額と法定相続人が分かれば、相続税の課税対象者であるか分かります。

 

【関連記事】相続税の基礎控除の計算方法と注意点はこちら

相続税がかからない非課税財産とは?

遺産総額から非課税となる財産を差し引くことができます。
ここでは非課税財産となる項目について紹介します。

祭祀関係

被相続人の葬式費用などは非課税財産となります。しかし「非課税財産として計上できるもの」と「計上できないもの」があります。また被相続人は借入などがある場合、「債務控除」という形で非課税財産となり、そのまま残債額を遺産総額から差し引くことが可能です。詳しくは下記の表をご確認下さい。

計上できるもの 計上できないもの
葬式費用 仮葬式・本葬式費用 葬式に関わる費用(お通夜・弔問客への食事代・お布施代など) 死体の捜索や運搬費 香典返戻費用 墓碑や墓地の購入費用 法会に要した費用
債務控除 借入金 被相続人に係る未払い医療費 アパートなどに関わる敷金・保証金 被相続人に係る未払いの所得税・住民税など 連帯債務 被相続人が生前に購入した墓や仏壇などの非課税財産に係わる未払金 保証債務

公益事業を目的としている財産

例えば寺院の神主がお寺の土地を相続した場合、公共目的の事業の土地であるため、非課税財産となります。また児童養護施設なども同様です。しかし、財産を取得してから2年経過しても公共目的として使用していない場合は、非課税財産の対象から外れます。更に遡って相続税が課税されますので注意しましょう。

条例による給付金受給の権利等

地方公共団体の条例により、被相続人が精神や身体障害などの理由から、身障害者共済制度で給付金を受けていた権利に関しては非課税財産となります。

生命保険金

生命保険金はみなし財産の扱いとなるため、課税対象です。また生命保険は保険契約者と被保険者、保険金受取人によって相続税ではなく、贈与税や所得税で納税するので注意が必要です。下記の表は被保険者ごとの納税方法をまとめた表です。

保険契約者 被保険者 保険金受取人 課税対象者 納税方法
父親 父親 母親 母親 相続税
母親 子供 子供 贈与税
問わない 父親 父親 所得税(一時所得)

上記の表を見る限り、父親が亡くなって母親が保険金を受け取った場合は相続税の課税対象となることがわかります。しかし、生命保険金が500万円×法定相続人の数までは非課税財産となります。つまり、生命保険金は課税対象であるものの、一定金額までは非課税財産となるため、課税されないこともあります。
生命保険金が500万円未満である場合は、その金額が非課税となり、非課税限度額を超えた場合は、その超えた部分の金額が課税対象となります。例えば法定相続人が3人で、生命保険金が2,000万円である場合は「2,000万円-500万円×3人=500万円」が遺産総額に算入されるということです。

個人経営の幼稚園事業で使っていた財産

個人で経営している幼稚園の事業に使われていた財産は非課税財産となります。ただし、幼稚園の経営が引き続き行われ、その事業が適正に行われていることが条件です。

公益法人への寄付

相続税の申告期限は、相続が発生した日(死亡を確認できた日)から10か月以内と定められています。申告期限までに相続した土地や建物、預金などを国や公共団体、公益法人などに寄付した場合は、寄付した相続財産に関しては非課税となります。

 

【関連記事】相続に税理士が必要なケースと選び方はこちら

無税にする・近づける場合に利用する控除

ここでは相続税の控除項目を紹介します。

障害者控除

相続人が障害者である場合は、障害者控除が適用できます。なお、障害者控除は「一般障害者」と「特別障害者」によって控除額が異なるため注意しましょう。

  • 一般障害者…満85歳まで10万円の控除
  • 特別障害者…満85歳まで20万円の控除

未成年者控除

法定相続人が未成年者である場合は未成年者控除が適用できます。
未成年者控除額は以下の計算方法で算出可能です。

未成年者控除=(20歳-現在の年齢)×10万円
なお、現在の年齢が15歳と10か月である場合は、10か月は切り捨てとなるため、15歳で計算します。

生前贈与の加算と控除

しかし、贈与できる財産が年間110万円以上である場合は、贈与税が課せられます。そのため相続税の節税方法としては、強い効果は見込めません。
その際に利用できるのが、相続時精算課税制度です。相続時精算課税制度を利用すれば、2,500万円までの財産贈与に関しては贈与税が課せられることはありません。


しかし相続が発生した時は、相続時精算課税制度を利用して贈与した遺産分が全て相続税の遺産総額に計上されます。

相次相続控除

最初の相続と次の相続との間が10年以内であり、同一の財産について相続税が課税される場合、後の相続における相続税額から前の相続における相続税の一部を控除することが可能となります。

配偶者控除

配偶者控除とは、配偶者特有の税額控除です。配偶者は下記のいずれかの金額まで控除を受けることが可能となります。非常に大きな控除であるため、配偶者が相続税を納税する可能性は低いです。

  1. 各人の課税価格の合計額×配偶者の法定相続分
  2. 1億6千万円

小規模宅地等の特例による控除

小規模宅地等の特例に該当する土地に関して、最大で80%評価額を下げることが可能です。例えば土地の相続税評価額が3,000万円である場合は、600万円になるということです。つまり、遺産総額を2,400万円圧縮することに繋がります。

【事例】相続税の非課税に関する事例

<<障害者控除や未成年者控除などを用いて課税されなかった事例はこちら>>

まとめ

今回は相続税の非課税限度額について解説してきました。
相続税は基礎控除額と非課税財産の価格の合計額内であれば、相続税を納める必要がありません。
しかし、相続の計算は非常に複雑であり、専門的な知識が必要です。
そのため、自身が相続税の課税対象者となるか、またはどれくらいの相続税が課せられるのかを知りたい方は弁護士や税理士などのプロに相談しましょう。

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