メールで相談する 0120-243-032

相続コラム

相続放棄

相続放棄したらお墓はどうなる?管理できない場合の墓じまいまで解説

#

先祖代々お墓を受け継いできた場合、両親が亡くなるとお墓の管理義務が回ってくることがあります。
管理義務が回ってきたら、必ず引き継がなければならないのでしょうか。
最近では管理費用を抑え、管理しやすい場所にお墓を移転するために、墓じまいを検討する方も多くなっています。
また、相続放棄をすれば、お墓の管理義務を放棄できるのかと考える方もいらっしゃいます。
この記事では、「相続放棄でお墓の管理を放棄できるのか」という疑問に回答します。
そのうえで、お墓が管理できない場合の対処法や、相続放棄前後で墓じまいをしてもよいのかについて、わかりやすく解説していきます。

目次

相続放棄をしてもお墓の管理は放棄できない

結論からいうと、相続放棄でお墓の管理義務は放棄できません。
なぜなら、お墓は「祭祀財産」(さいしざいさん)に該当し、祭祀財産は相続放棄の対象外だからです。
ここでは、「お墓は相続財産とはみなされないこと」および「お墓は祭祀承継者が引き継ぐこと」という2つのポイントについて、詳しく解説していきます。

お墓は相続財産とみなされない

お伝えしたように、お墓は故人の財産(相続財産)ではなく、祭祀財産として扱われます。
祭祀財産は以下のように民法897条で、相続の対象とならないと規定されているため、相続放棄でお墓を受け継がないようにすることはできません。

(祭祀に関する権利の承継)

第八百九十七条 系譜、祭具及び墳墓の所有権は、前条の規定(※)にかかわらず、慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者が承継する。
ただし、被相続人の指定に従って祖先の祭祀を主宰すべき者があるときは、その者が承継する。
2 前項本文の場合において慣習が明らかでないときは、同項の権利を承継すべき者は、家庭裁判所が定める。

【参考】民法|e-Gov法令検索

※「前条の規定」とは、「相続人は、相続開始の時から、被相続人の財産に属した一切の権利義務を承継する(民法896条)」を指します。

なお、祭祀財産は以下のように3種類に分けられ、お墓は墳墓(ふんぼ)に該当します。

系譜 家系図などの、先祖代々の繋がりを示した図や記録のこと
祭具 位牌・仏壇・神棚などの、先祖を祭る際に用いられる器具のこと
墳墓 お墓や墓地など、死体・遺骨・遺品などを埋めて供養する場所のこと

お墓は祭祀承継者が引き継ぐ

民法897条の規定によると、お墓を含む祭祀財産は、相続人が引き継ぐわけではなく、「慣習に従って祖先の祭祀を主宰すべき者(祭祀承継者)」が引き継ぐことになります。
祭祀継承者とは、祭祀財産を継承する人物のことです。
祭祀継承者の決め方については後述しますが、基本的には親族の中から選ばれることになるでしょう。

そして、祭祀承継者になった人は、相続放棄をしても祭祀財産であるお墓は対象外となるため、原則としてお墓の管理義務は残ってしまいます。
なお、祭祀財産は相続財産にはあたらないため、遺産分割の対象とはなりません。祭祀財産の承継によって、祭祀承継者の相続分が増えることはないでしょう。

祭祀承継者はどのようにして決められるのか

祭祀承継者は、民法897条の規定に従い、次の3つの方法で決定されます。

  • 1. 遺言などで被相続人(故人)による指定がある場合はそれに従う
  • 2. 被相続人(故人)による指定がない場合は慣習に従って決める
  • 3. 慣習があきらかではない場合は家庭裁判所に決めてもらう

以下、それぞれの方法について詳しく解説していきます。

1.遺言などで被相続人(故人)による指定がある場合はそれに従う

遺言書などで祭祀承継者の指定がある場合には、その指定に従って祭祀承継者が決定されます。
たとえば、「お墓の管理は長男がおこなうこととする」などの遺言があれば、遺言に従い長男がお墓の管理義務を負います。
故人から祭祀承継者の指定がある場合は、基本的に祭祀財産の承継を断れません。
話し合いでほかの相続人に祭祀財産の管理を任せることはできますが、何か問題があったときは、法律上の祭祀承継者として、故人に指定された相続人が責任を負います。
なお、祭祀承継者の指定は遺言だけでなく、口頭でもおこなえますが、口頭の場合には祭祀承継者を指定した証拠が残りません。
相続人や身内が納得するように、遺言書など書面で残すのが望ましいといえるでしょう。

2.被相続人(故人)による指定がない場合は慣習に従って決める

故人から祭祀承継者の指定がない場合には、慣習に従って祭祀承継者を決定します。
慣習は地域や家ごとに異なるため、法律で明確な規定が定められているわけではありません。
祭祀財産の承継について、とくに決まりごとがなければ、相続人間の話し合いによって決定します。
たとえば、先祖代々お墓は長男が受け継ぐと決まっていた場合は、基本的に長男がお墓を引き継ぐことになります。
日本では、配偶者や長男が葬儀において喪主を務め、そのまま祭祀承継者になるケースが多いです。
ただし、慣習は曖昧であり、相続人それぞれで認識が異なる場合もあります。
もしも相続人間で争いになった場合には、慣習の有無について個別の判断が必要です。

3.慣習があきらかではない場合は家庭裁判所に決めてもらう

故人からの指定も、とくに慣習もない場合には、家庭裁判所が客観的に祭祀承継者を決定することもあります。
相続人同士の話合いで祭祀承継者を決定できれば問題はないですが、争いになった場合には、家庭裁判所に「祭祀承継者指定の申立て」を行い、裁判所は、下記の事項などをもとに、誰が祭祀承継者としてふさわしいか判断をします。

  • ● 故人との続柄(配偶者や長男にあたるかどうか)
  • ● 故人と相続人の関係性(生前交流があったのか、同居の有無など)
  • ● 祭祀を承継する意思や承継する能力があるかどうか
  • ● 祭祀財産(お墓など)との場所的関係(遠方にお墓があるかどうか)
  • ● 祭祀財産を承継する目的
  • ● ほかの相続人や親族の意見
  • ● これまでの祭祀財産の管理状況 など

裁判所に祭祀承継者を決めてもらう方法は、あくまでも最終手段です。
基本的には、相続人がお互い納得のいく形で祭祀承継者を決定する方法が望ましいでしょう。

相続や遺言の
無料相談受付中!

お気軽にお問い合わせください!

祭祀承継者となってもお墓が管理できない場合の対処法

慣習や遺言による指定で祭祀承継者になってしまった場合でも、お墓が遠方にある場合などは、どうしても管理が難しいでしょう。
もし、祭祀承継者としてお墓を管理するのが難しいのであれば、「墓じまい」もしくは「お墓を管理できる場所に移転する」ことをご検討ください。
以下では、それぞれの対処法について詳しく解説していきます。

墓じまいする

どうしてもお墓の管理が難しい場合には、墓じまいをして管理義務をなくすことを検討してください。
墓じまいとは、お墓を解体・撤去したうえで、土地の使用権を管理者に返還することです。
墓じまいをすれば、今後お墓の管理費用を支払う必要がなくなりますし、定期的にお墓の管理者とやりとりをする必要もなくなります。
祭祀負担者の負担を大幅に軽減することも可能です。
ただし、祭祀承継者が親族に相談もなしに勝手に墓じまいをした場合、お墓を大切に思ってきた親族との関係が悪化してしまう可能性があります。

また、墓じまいには「改葬許可申請」や「墓地使用契約の解約手続き」などが必要です。50万円前後の工事費用もかかるため、祭祀承継者の金銭的負担も大きいことは頭に入れておくべきでしょう。
墓じまいをしたあとは、自宅で遺骨を保管したり、故人のゆかりのある土地に散骨したりすることが考えられます。
または、近年利用者の多い樹木葬や永代供養などを利用するのもよいでしょう。
樹木葬や永代供養であれば、お墓の管理をすることなく故人の供養をおこなえます。
ただし、お墓をなくすことは、親族にとって重大な事項です。
墓じまいをする場合は、ほかの相続人や親族としっかり話し合って決めましょう。

管理できる場所に移転する

お墓が遠方にあって管理が難しいのであれば、祭祀承継者が住んでいる地域にお墓を移転する方法を検討してみましょう。
お墓の移転であれば、お墓自体をなくすわけではないので、親族からの同意も得られやすくなります。
ほかの親族と揉めたくない場合や、お墓をなくすことに抵抗がある場合は、管理しやすい場所にお墓を移転することを視野に入れましょう。
ただし、お墓を移転する際にも、各種移転の手続きや工事費用がかかることは変わりません。
自分にとって最適な管理方法を選択するためにも、まずは移転の手続き方法や工事費などの見積もりを出してもらうとよいでしょう。

相続放棄をおこなう前に墓じまいはできるのか

相続放棄前に墓じまいをおこなっても、とくに問題はありません。
相続放棄の前に墓じまいをすることが単純承認に該当し、「相続放棄ができなくなってしまうのではないか」と心配になるかもしれませんが、前述したように、お墓を含む祭祀財産は相続の対象とはなりません。
そのため、相続放棄をする予定であっても、今後お墓の管理が難しいと考えられるのであれば、すぐに墓じまいができます。
ただし、まだ相続放棄をしていないにもかかわらず、お墓だけ先に処分してしまうと、親族から強い反発を受ける可能性があります。
親族同士で揉めごとを起こさないためにも、墓じまいをする場合には、ほかの親族に納得してもらったうえで手続きを進めるのがよいでしょう。

仏具などのお墓以外のものも相続放棄できない

前述したように、仏具や仏壇なども祭祀財産にあたるため、相続放棄をしてもその承継は拒否できません。

一方で、祭祀承継者は、祭祀財産を自由に処分できるため、相続放棄後でも仏具や仏壇を処分できるのが原則です。
ただし、高価な仏具については、勝手に処分すると単純承認に該当し、相続放棄できなくなる可能性があります。
たとえば、 高価な素材でできた仏具などを勝手に処分した場合、故人の財産を引き継ぐことを認めたものとして、相続放棄が認められなくなる可能性があるのです。

この際の「高価」については、法律上明確な基準があるわけではないため、個別の判断となります。
仏具や仏壇の処分に迷った場合は、自己判断するのではなく、相続の専門家である司法書士に相談してみることをおすすめします。

まとめ

相続放棄と墓の関係性について解説してきました。
お墓は相続の対象とならない「祭祀財産」に該当するため、祭祀承継者は相続放棄をしてもお墓の管理を拒否できません。
祭祀承継者になってしまったものの、お墓が遠方にあるなどの理由で管理が難しい場合には、墓じまいやお墓の移転を検討してみましょう。
相続やお墓の処分、移転には法律の専門知識を必要とする場面が多くあります。
ご自身だけで対応することに不安があるようでしたら、司法書士までお気軽にご相談ください。
司法書士法人みつ葉グループでは、無料相談を実施しており、相続や相続放棄に関することであれば、誰でも無料で相談が可能です。

相続コラムTOP