相続放棄
相続放棄は兄弟でまとめておこなうとメリットあり!必要書類や注意点を解説
亡くなった両親に多額の借金があることが発覚した場合など、借金を相続しないために、相続放棄を検討することになるでしょう。
相続人である兄弟・姉妹全員で話し合った結果、全員で相続放棄をするのであれば、まとめて手続きをおこなうことで、手間や時間を削減したいと考える方も多いと思います。
そこで本記事では、相続放棄を兄弟・姉妹でまとめておこなう方法や費用相場、メリット・デメリットについてわかりやすく解説していきます。
兄弟・姉妹でまとめて相続放棄を検討している場合には、ぜひこの記事を参考に、スムーズな手続きを進めてみてください。
目次
相続放棄は兄弟でまとめておこなえる
相続放棄は、相続人が単独でできる手続きですが、兄弟・姉妹など相続順位が同じ相続人全員でまとめておこなうことも可能です。
相続順位とは、相続する権利を持つ優先順位のことで、順位が上の人から順番に相続する権利がまわってきます。
民法で規定されている相続順位は、以下のとおりです。
【相続順位】
第1順位 | 子ども(子どもが亡くなっている場合は孫やひ孫) |
第2順位 | 両親(両親が亡くなっている場合は祖父母や曾祖父母) |
第3順位 | 兄弟・姉妹(兄弟・姉妹が亡くなっている場合はその子ども) |
※なお、亡くなった者の配偶者は、どの順位においても常に相続人です。
たとえば、被相続人(なくなった方)の子どもが複数人いた場合、その子どもは全員第1順位の相続人となるので、まとめて相続放棄をおこなえます。
ただし、第1順位の方が相続放棄の際に、第2順位の方も一緒に相続放棄することはできません。
後順位の相続人は、先順位の相続人がすでに亡くなっている場合、もしくは相続放棄した場合でなければ、相続する権利がまわってきませんので、自分に相続する権利がまわってきてから相続放棄の手続きを行います。
相続放棄を兄弟でまとめておこなう際の費用相場
相続放棄を兄弟でまとめておこなう場合にかかる費用は、主に以下の3つです。
- 提出書類の取得費用
- 手続きにかかる費用
- 専門家に依頼した場合にかかる費用
自分たちで手続きをおこなった場合と、専門家に手続きを依頼した場合にかかる費用の相場を、それぞれ解説していきます。
自分たちで手続きをする場合は5000円ほど
専門家に依頼せず、相続人が自分たちで手続きをした場合にかかる費用は実費のみで、相場は3000〜5000円ほどです。
費用の内訳は、以下のとおりです。
被相続人の住民票除票または戸籍附票 | どちらも1通300円 |
被相続人の死亡が記載された戸籍謄本 (除籍・改正原戸籍) ※相続順位によって必要戸籍も変わりますので、詳細は管轄の家庭裁判所のHPをご覧ください |
1通750円 |
申述人(相続放棄する人)の戸籍謄本 | 1通450円 |
収入印紙 | 申述人1人あたり800円分 |
連絡用の郵便切手 | ~500円程度 ※申述する裁判所によって異なる |
裁判所への郵送費 (レターパックや簡易書留など) |
370円〜 |
被相続人の戸籍謄本については、出生時から死亡時までのすべての戸籍謄本が必要になるケースがあり、取得枚数が多くなると、その分、費用がかかります。
結婚や離婚で転籍を繰り返していた場合や、第2・第3順位の相続人が同時に相続放棄をする場合にも、相場よりも実費がかかってしまう場合があります。
また、住民票や戸籍謄本の取得費用は、各自治体によって異なることがあります。
取得する際には、あらかじめ各自治体のホームページで確認してきましょう。
専門家に依頼する場合は1人あたり1〜10万円ほど
自分たちで相続放棄手続きをおこなうのは難しい、時間がないといった場合、司法書士や弁護士などに依頼できます。
専門家に相続放棄を依頼する場合には、相続人1人ごとに手続き費用がかかります。
そのため、兄弟まとめて依頼する場合には、人数分の費用がかかるのが基本です。
相続放棄手続きの全てを任せることも、一部を任せることもでき(専門家ごとに依頼できる内容は異なります)、依頼内容によって費用は異なりますが、1人あたり1万〜10万円ほどです。
複数名で依頼した場合の割引を用意している事務所もあります。
なお、専門家に依頼する場合、上記の依頼費用とは別に、書類取得にかかる費用などが実費としてかかることもあります。
具体的な費用については専門家に相談した際に確認しましょう。
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相続放棄を兄弟まとめておこなうメリット
相続放棄を兄弟でまとめておこなう主なメリットは、以下の3つです。
相続放棄を兄弟まとめておこなう3つのメリット |
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ここからは、それぞれのメリットについて、詳しく解説していきます。
1.兄弟同士での相続トラブルを避けられる可能性がある
相続放棄を兄弟でまとめておこなうことによって、兄弟同士での相続トラブルを避けられる可能性があります。
相続放棄は預貯金などの財産だけでなく、借金などマイナスの財産もすべて引き継がないようにする手続きのため、相続人の一部が相続放棄すると、残った相続人の負担が増え、トラブルに発展するリスクがあります。
以前から仲が悪い兄弟の場合、兄弟のうち1人だけが勝手に相続放棄をしたことで、さらに関係が悪化する可能性も考えられるでしょう。
兄弟で足並みを揃えて相続放棄をおこなうのであれば、兄弟のうち誰か1人が大きく損をする事態は避けることができ、不要なトラブルも防げます。
2.兄弟で共通して必要な書類は1通用意すればよい
兄弟でまとめて相続放棄をすれば、共通している提出書類を流用できるため、書類収集をスムーズに進められます。
相続放棄においては、申述期間として「自己のために相続の開始があったことを知ったとき(一般的には被相続人が亡くなったとき)から3ヶ月以内」という期限が設けられています。
相続放棄に必要な書類の収集に時間がかかると、あっという間に3か月が経過してしまい、相続放棄ができなくなってしまうおそれがあるのです。
兄弟まとめて相続放棄をおこなう場合、「被相続人の戸籍謄本や除籍謄本」などの共通している書類については、1通だけ準備すれば手続きを進められます。
3.専門家に支払う費用が減ったり手間が省けたりする
兄弟まとめて相続放棄を依頼することで、専門家に依頼する費用が安くなる場合があります。
相続放棄を司法書士や弁護士などの専門家に依頼した場合、相続放棄の申述人1人あたりにつき、以下の費用がかかるのが一般的です。
着手金+成功報酬金 | 司法書士の場合:1万〜10万円程度 弁護士の場合:5万〜10万円程度 |
兄弟でまとめて相続放棄を依頼すれば、状況の把握や財産調査などの手間を省けるので、その分の費用を割引きしてくれるケースがあります。
また、裁判所内で流用できる書類もあることから、必要書類の収集も効率よく進められ、相続人がそれぞれ別々に専門家に依頼するよりも手間や時間を省くことが可能です。
相続放棄を兄弟まとめておこなう際に必要な準備
相続放棄を兄弟まとめておこなう際に必要な準備は、以下の2点です。
相続放棄を兄弟まとめておこなう際に必要な準備 |
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それぞれについて、詳しく解説していきます。
1.相続財産調査をした上で相続放棄の最終判断をする
相続放棄をおこなう場合には、被相続人の財産調査をしっかりとおこなった上で、相続するか相続放棄するかの判断を慎重におこなう必要があります。
1度でも相続放棄が裁判所に認められると、基本的にそれ以降の撤回や取り消しは認められません(民法919条)。
財産調査を怠り、相続放棄をした結果、あとから莫大な財産があることがわかっても、その相続放棄を取り消すことはできないのです。
一方で、相続放棄には3ヶ月という期限が設けられているため、期限内に相続放棄の是非を判断するためにも、速やかに財産調査をおこなう必要があります。
また、相続放棄をした者は、相続開始当初から相続人ではなかったとみなされる点にも注意が必要です(民法939条)。
本来、被相続人が亡くなる前にすでに相続人が亡くなっていた場合には、その相続人の子どもに相続権が移ります。
これを、法律用語で「代襲相続」と呼びます。
しかし、相続放棄をした場合には、はじめから相続人ではなかったと扱われるため、代襲相続はおこなわれません。
つまり、自分の両親が亡くなった際に相続放棄をすると、その両親の相続財産については、自分の子どもに引き継ぐことはできなくなります。
以上のことから、慎重に相続放棄をするかどうかの判断をする必要があるでしょう。
【参考】民法|e-Gov法令検索
2.相続放棄の必要書類を集める・作成する
先述のとおり、相続放棄をするためには、「相続放棄申述書」と呼ばれる申請書のほか、住民票や戸籍などの書類が必要です。
相続放棄で必要になる主な書類は、以下を参考にしてください。
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相続放棄の申述書は、裁判所のホームページでダウンロードできます。
被相続人の戸籍謄本や除籍謄本など、兄弟間で共通する書類については重ねて提出する必要はありませんが、以下の書類については、基本的に相続人それぞれの分を裁判所に提出しなければなりません。
- 相続放棄申述書
- 申述人の戸籍謄本(同じ戸籍に入っていない場合)
- 収入印紙
- 連絡用の郵便切手
提出書類に不備があると、申請書類の修正や追加書類の提出を求められることがあります。
裁判所から連絡があった場合には、指示に従って、速やかに追加書類を提出してください。
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相続放棄を兄弟まとめておこなう際の流れ
兄弟まとめて相続放棄をおこなう場合、以下の流れで手続きを進めていきます。
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申述期間内にスムーズに手続きを進めるためにも、申述書の提出から相続放棄が受理されるまでの流れをしっかりと頭に入れておくようにしましょう。
1.期限内に管轄の家庭裁判所へ申述書を提出する
まずは、相続放棄の申述期間内に、管轄の家庭裁判所へ申述書と必要書類を提出します。
相続放棄の申述期間は「自己のために相続の開始を知った時から3ヶ月以内」です。
「自己のために相続の開始を知った時」とは、多くの場合、被相続人が亡くなった日を指します。
ただし、兄弟間で連絡をとっておらず、遠方に住んでいて両親が亡くなったことを知らなかった場合には、3ヶ月を計算する最初の日付がずれる場合があります。
なお、3ヶ月以内におこなわなくてはいけないのは、相続放棄の申述書や各種書類を裁判所に提出するところまでです。
したがって、3ヶ月以内に申述ができていれば、裁判所に申述を受理されるのが3ヶ月を過ぎてしまっても問題はありません。
また、相続放棄の申請をする裁判所は「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」です。
家庭裁判所であればどこの裁判所でもよいわけではないので、申請する際には、必ず被相続人の住民票(除票)や戸籍の附票で管轄裁判所を確認するようにしましょう。
2.管轄の家庭裁判所から照会書が送付されたら回答書を返送する
裁判所に相続放棄の申述をしても、それで終わりではありません。
申述後1〜2週間で、裁判所から相続人それぞれのもとに届く相続放棄照会書(相続放棄回答書)に必要事項を記載し、一定期間内に返送する必要があります。
相続放棄照会書は、本人の意思で相続放棄をしているかどうかを確認するための書面です。
兄弟でまとめて相続放棄の申述をおこなったとしても、相続放棄照会書(相続放棄回答書)への回答は1人1人行います。
必ず相続人ごとに個別に回答するようにしてください。
3.管轄の家庭裁判所から相続放棄申述受理通知書を受け取る
相続放棄照会書(相続放棄回答書)を裁判所に提出してから1〜2週間が経過すると、裁判所から「相続放棄申述受理通知書」と呼ばれる書面が届きます。
この相続放棄申述受理通知書は、相続放棄が認められたことを示す書面であるため、この書面が届けば、相続放棄の手続きはすべて完了です。
この通知書の送付は1回限りなので、くれぐれも無くさないようにしてください。
また、後から被相続人の債権者などとトラブルになった際に、相続放棄の事実を証明するための書類として、裁判所に「相続放棄申述受理証明書」と呼ばれる書面を発行してもらうこともできます。
なお、この書面は、証明書1通につき収入印紙150円分で発行してもらうことができ、何度でも再発行が可能です。
相続放棄を兄弟全員まとめておこなう際の注意点
兄弟まとめて相続放棄をおこなう際の主な注意点は、以下の3つです。
兄弟まとめて相続放棄をおこなう際の3つの注意点 |
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相続放棄後のトラブルを避けるためにも、ここで挙げる注意点をしっかりと把握しておき、事前にできることは確実な対策をとっておくようにしましょう。
相続放棄が認められるかどうかの判断は個別におこなわれる
相続放棄が認められるかの判断は、相続人ごとに個別でおこなわれます。
そのため、兄弟でまとめて相続放棄をおこなったからといって、相続放棄の判断が必ず同じになるわけではありません。
とくに、相続放棄照会書(相続放棄回答書)の記入・返送は、相続人それぞれがおこなうため、各自慎重に内容を確認し、記入する必要があります。
基本的に、申述期間内の申述でかつ相続財産の使い込みなどがなければ、とくに問題なく相続放棄が認められるケースが多いです。
しかし、相続人のうち1人が回答書に「相続財産で自分の借金を返済した」などと記載されていたら、その相続人だけ相続放棄が認められなくなる可能性があります。
もし、回答書の記載内容に不安がある場合は、専門家に依頼するなどして、相続人全員の回答の内容について足並みを揃えるとよいでしょう。
次の相続順位の相続人に相続権が移る場合は連絡したほうがよい
兄弟全員で相続放棄をした場合、被相続人の両親や兄弟・姉妹に相続する権利が移ります。
ただし、相続放棄をしても、家庭裁判所から次順位の相続人に対して連絡がいくわけではありません。
そのまま連絡せずに放っておくと、被相続人の債権者から次順位の相続人に突然連絡がくるなど、迷惑をかけてしまうおそれがあります。
もちろん、次順位の相続人は、「自己のために相続の開始を知った時から3ヶ月以内」であれば相続放棄をおこなえます。
そのため、債権者から連絡が来たことによって自分に相続権がまわってきたことを知ったときから3ヶ月以内に相続放棄をおこなえば、被相続人の借金を背負うことはありません。
しかし、次順位の相続人に余計な心配を与えないようにするのであれば、あらかじめ相続放棄の件を相談しておくことが賢明です。
相続放棄をしたあとの次順位の相続人への連絡は必須ではありませんが、トラブルを避けるためにも、タイミングを見て事情を説明しておくことをおすすめします。
相続放棄しても財産の保存義務が残る場合がある
配偶者・兄弟がまとめて相続放棄をした場合、被相続人の両親や兄弟がすでに亡くなっていたり、元々いなかったりする場合には、相続する者がいなくなります。
この場合、家庭裁判所に「相続財産清算人」を選任してもらい、相続財産の清算処理をおこなったのちに、相続財産を国庫に帰属させることになるのが原則です。
ここで、相続人が「相続財産に属する財産を現に占有している場合」(民法940条)には、その相続財産を相続財産清算人に引き渡すまでは、適切に管理・保存しなければいけない義務が生じます。
「現に占有」とは、相続財産を事実上管理・支配している状態のことを指します。
たとえば、相続財産である住宅に住んでいる場合には、相続放棄をしたにもかかわらず、その住宅の管理・保存義務が発生する可能性があります。
管理義務を怠り、相続財産の価値を下げたり第三者に不測の損害を与えた場合には、相続放棄をしているにもかかわらず、損害賠償請求を受ける可能性も考えられます。
トラブルを避けるためにも、相続財産の管理義務が発生するかどうかは、必ず事前に確認しておくようにしましょう。
関連記事:相続放棄すると親戚に迷惑がかかる?迷惑をかけない方法や注意点を解説
【参考】民法|e-Gov法令検索
まとめ
相続放棄は相続順位が同じ相続人全員でまとめておこなうことも可能です。
兄弟・姉妹でまとめて相続放棄をおこなえば、申述に必要な書類を一部省略できるため、スムーズに必要書類を集められます。
また、兄弟でまとめて専門家に依頼すれば、状況の把握や財産調査などの手間を省けるので、その分の費用を割引きしてくれる事務所もあります。
次順位の相続人への連絡や管理義務が発生するかどうかなど、相続放棄の注意点は多々ありますが、相続人全員一致で相続放棄を検討しているのであれば、まとめて手続きをしたほうがメリットが大きいといえるでしょう。
兄弟まとめて相続放棄を行うことを検討している方は、一度、みつ葉の司法書士までご相談ください。
相続放棄をする方全員が無事に手続きを完了できるよう、丁寧にサポートいたします。
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