相続放棄
相続放棄の照会でほかの相続人が相続放棄したかわかる!
亡くなった方に借金があることを知っていた場合、相続人としては相続放棄を検討することとなるでしょう。
しかし、先順位の相続人が相続放棄をしない限りは、後順位の相続人は、相続放棄をすることができません。
先順位の相続人が相続放棄をしても、裁判所から後順位の相続人に連絡がいくことはないため、先順位の相続人と疎遠になっていると、相続放棄をしたかどうかの確認ができないケースもあります。
この場合、家庭裁判所に相続放棄の照会をすることで、先順位の相続人が相続放棄をしているかどうかを調べられます。
この記事では、相続放棄の照会制度の概要や注意点について詳しく解説していきます。
自分に相続権が回ってきているにもかかわらず何もせずにそのまま放っておくと、被相続人の借金を背負うことにもなりかねません。この記事を参考に、相続放棄の照会に関する正しい知識を身につけてください。
目次
特定の人が相続放棄したかどうかは照会で調べられる
先順位の相続人など、特定の人が相続放棄をしたかどうかは、家庭裁判所を通して無料で調べられます。
たとえば、亡くなった被相続人の兄弟は第3順位の相続人にあたるため、子どもや両親が相続放棄をした場合には、その兄弟にも相続権がまわってきます。
しかし、被相続人の子どもや両親が相続放棄をしても、兄弟に対して家庭裁判所からその旨の連絡がくることはありません。
つまり、相続放棄をしたかどうかは、自分で調べる必要があるのです。
もちろん、先順位の相続人が相続放棄したことを知らせてくれていれば、わざわざ照会する必要はありません。
しかし、相続人同士で疎遠になっている場合など、親族関係によっては、わざわざ相続放棄したことを知らせてくれない可能性も考えられます。
その点、先順位の相続人が相続放棄をしたかどうかを無料で調べられる相続放棄の照会は、自分で調べたい場合に有効な手段となるでしょう。
なお、照会は必ず書面で申請する必要があります。
電話などでの照会には一切応じてもらえません。
相続放棄の照会ができる条件
相続放棄の照会ができる条件は、以下のとおりです。
相続放棄の照会ができる2つの条件 |
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相続放棄の照会に関しては、照会できる人や照会できる期間に条件が設けられています。
誰でも無制限に照会できるわけではありませんので、照会を検討している方は、これから説明する条件をしっかりと確認しておきましょう。
照会ができる人|相続人または被相続人に対する利害関係人
特定の人が相続放棄をしたかどうかは、その人のプライバシーに関わります。
そのため、相続放棄の照会ができる人は、以下に限られます。
- 相続人
- 亡くなった方の利害関係人(債権者など)
相続順位を問わず、相続する権利を有している、もしくは今後相続する権利がまわってくる可能性のある方であれば、誰でも相続放棄の照会ができます。
また、被相続人の債権者や遺言によって財産を受け取る受遺者など、法律上「利害関係人」と呼ばれる人も、相続放棄の照会ができます。
照会ができる期間|照会先の家庭裁判所によって異なる
相続放棄の照会は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に申請しておこないます。
照会ができる期間は、照会先の家庭裁判所によって異なるため、あらかじめ申請する裁判所のホームページなどで確認しておくとよいでしょう。
たとえば東京家庭裁判所の場合、以下が対象の期間となります。
亡くなった方の死亡日 | 申請者 | 調査対象期間 |
2000年(平成12年)以降 | すべての相続人 | 死亡日から現在まで |
---|---|---|
1999年(平成11年)以前 | 第1順位者 | 被相続人の死亡した日から3か月間 |
後順位者 | 先順位者の放棄の受理がされた日から3か月間 |
なお、あまりにも古すぎる記録は、家庭裁判所で破棄されている可能性があり、照会ができないケースも考えられます。
また、例外的なケースで相続放棄をしていた場合(3ヶ月の熟慮期間後に相続放棄した場合など)は、各家庭裁判所の調査対象期間によっては、相続放棄がされているにもかかわらず、「相続放棄はされていない」と回答される可能性があるため、その点は留意しておきましょう。
【参考】相続放棄・限定承認の申述の有無についての照会をされる方へ|東京家庭裁判所
相続放棄の照会に必要な準備
相続放棄の照会で必要となる主な準備は、以下のとおりです。
相続放棄の照会に必要な準備 |
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相続放棄の照会は、家庭裁判所ごとに運用が異なる場合があります。
そのため、照会を検討している場合には、あらかじめ申請する家庭裁判所に申請の要件について確認しておくことをおすすめします。
照会申請書や被相続人等目録などの必要書類を作成する
まずは、相続放棄の照会に必要な申請書類の作成をおこないます。
事前に作成しておくべき書類としては、以下のようなものが挙げられます。
照会申請書 | 照会者自身の個人情報や、照会の理由などを記載する |
---|---|
被相続人等目録 | 亡くなった方の個人情報や、照会したい人の氏名などを記載する |
相続関係図 | 相続人が照会する場合、相続人と申請者の関係をスムーズに把握するために、提出を求められる場合がある |
照会申請書や被相続人等目録の様式は、各家庭裁判所によって若干様式が異なる場合があります。
申請する際は、申請する家庭裁判所のホームページから、各様式をダウンロードして使用するようにしてください。
相続関係図は手書きで簡単に記載したもので問題ないケースが多いです。
戸籍や住民票などの必要書類を集める
相続放棄の照会をする場合、照会申請書や被相続人等目録とあわせて必要書類を家庭裁判所に提出しなければなりません。
提出する書類は申請する家庭裁判所によって若干異なる場合がありますが、おおむね以下の書類が必要となります。
相続人が申請する場合 |
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利害関係人(債権者等)が申請する場合 |
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家庭裁判所によっては別途追加資料の提出を求められる場合がありますが、その場合は、指示に従って適切な資料を提出するようにしましょう。
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相続放棄の照会手続きの流れ
裁判所に手続きの申請をしたことがない場合、どのような流れで手続きが進んでいくのか、不安に思う方も多いことでしょう。
ここでは、相続放棄を家庭裁判所に申請した場合の、大まかな流れについて解説していきます。
1.管轄の家庭裁判所で照会の申請をする
照会申請書や被相続人等目録を作成し、提出書類を収集したら、家庭裁判所に照会の申請をおこないます。
照会先は、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。
管轄外の家庭裁判所に提出すると申請を受け付けてもらえないため、「被相続人の最後の住所地」と「管轄裁判所」をしっかりと確認するようにしてください。
なお、正確な「被相続人の最後の住所地」は、住民票(除票)や戸籍の附票で調べられます。
また、管轄する裁判所は、以下裁判所のホームページで確認してください。
照会は基本的にいつでもおこなえますが、裁判所によっては、先順位の相続人が相続放棄をしたという情報を持っている場合を除き、死亡日から3ヶ月以内の照会には応じられないとしている場合があります。
二度手間になってしまうことを避けるためにも、あらかじめ各裁判所のホームページで、申請条件をしっかりと確認しておきましょう。
2.管轄の家庭裁判所から照会の結果が文書で送られてくる
裁判所での調査が完了すると、申請時に用意した返信用封筒を使用し、申請結果が文書で送られてきます。
照会にかかる期間は裁判所によってまちまちですが、1週間から10日ほどかかるケースが多いでしょう。
照会の結果、先順位の相続人が相続放棄をしていて、相続権が自分にあることがわかった場合には、速やかに必要な手続きをおこなう必要があります。
相続権が自分にあった場合に対応すべきこと
相続放棄の照会で、相続する権利が自分にあることがわかった場合には、できるだけ早く以下の2つの対応をおこなってください。
相続権が自分にあった場合に対応すべきこと |
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それぞれについて、詳しく解説していきます。
1.相続財産調査の上で相続放棄するかどうかを判断する
自分に相続する権利が回ってきている場合、被相続人の財産調査をおこなった上で、相続するか、相続放棄をするかを決める必要があります。
相続権がまわってきている方は、以下に挙げる3種類のうち、いずれかの方法で相続手続きをおこなわなければなりません。
相続方法 | 概要 | 裁判所での手続き |
単純承認 | 全財産を引き継ぐ | 不要 |
相続放棄 | 全財産を引き継がない | 必要 |
限定承認 | 預貯金などのプラスの財産の範囲で、借金などのマイナスの財産を引き継ぐ | 必要 |
単純承認はマイナスの財産よりプラスの財産が多い場合、相続放棄はマイナスの財産の方が多い場合、限定承認はどちらが多いかわからない場合に適していることが多いです。
被相続人の財産調査の結果、借金を含むすべての財産を引き継ぐのであれば、特別な手続きは必要ありません。
しかし、預貯金などのプラスの財産よりも借金などのマイナスの財産が多いケースにおいて、相続放棄や限定承認をおこなう場合には、必要書類を準備して裁判所に申立てをおこなう必要があります。
ただし、借金のほうが多いと思っていても、相続財産調査をすることで、あとになって思わぬ財産が見つかる可能性も考えられます。
相続放棄の撤回や取り消しは基本的に認められていないため、自身が損をしないよう、しっかりと財産調査をした上で相続か相続放棄かの判断をおこないましょう。
なお、相続放棄や限定承認には期限が設けられています。
相続財産の調査に時間がかかると、いつの間にか申請期限を超えてしまうおそれがあるため、速やかな財産調査および判断をおこなうことが重要です。
また、限定承認は、同順位の相続人全員の同意が必要です。
たとえば、被相続人の弟が限定承認をしたいと考えても、同順位である被相続人の妹が限定承認に反対している場合には、手続きを利用できません。
2.相続放棄や限定承認をする場合は期限内に手続きをおこなう
相続放棄や限定承認は、「自己のために相続の開始があったことを知ったとき(自分に相続権が回ってきたことを知ったとき)」から3ヶ月以内に手続きをおこなう必要があります。
申請期限を過ぎると、単純承認をしたものとみなされてしまい、基本的に相続放棄や限定承認を裁判所に認めてもらえなくなります。
申請期限を過ぎることにつき何か特別な事情があれば、弁護士が裁判所に理由を伝えることで相続放棄や限定承認を認めてもらえる可能性もありますが、必ずしもそれが成功するとは限りません。
被相続人の戸籍が転々としている場合など、必要書類の準備に時間がかかってしまうケースもあるため、不安であれば、相続手続きに精通している弁護士に対応を依頼することをおすすめします。
なお、相続放棄や限定承認の申請先は、照会の場合と同様に、「被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所」です。
相続放棄の照会をする場合の注意点
相続放棄の照会をする際の注意点は、以下の2つです。
- 照会手数料は無料だが専門家に依頼する場合は費用がかかる
- 照会したい人の氏名を記載する場合は旧字体・新字体を区別する
照会をスムーズにおこない、正確な情報を確認するためにも、注意点についてはしっかりと確認しておくようにしてください。
1.照会手数料は無料だが専門家に依頼する場合は費用がかかる
相続放棄の照会は無料でおこなえます。
ただし、専門家に照会を代行してもらう場合には、別途依頼費用が必要です。
費用は事務所によって異なるため一概にはいえませんが、数万円程度で設定されているケースが多いです。
また、裁判所に書面を送る際の郵送費や申請する際に必要となる返信用切手などの実費は、申請者が負担します。
2.照会したい人の氏名を記載する場合は旧字体・新字体を区別する
照会申請書や被相続人等目録など、照会したい人の氏名を記載する際は、旧字体・新字体をしっかりと区別して申請をおこなうようにしてください。
裁判所は、照会書に記載された氏名と裁判所に残されている事件簿などを比べることで、相続放棄がされているかどうかを調査します。
たとえば、照会書には「”高”橋太郎」と記載されているにもかかわらず、裁判所の記録には「”髙”橋太郎」と記載がある場合には、別人であると判断されてしまい、適切な回答が得られない場合があります。
申請する際には、戸籍謄本などで、照会対象者の正しい氏名をあらかじめ確認しておくことをおすすめします。
また、照会対象者に氏名の変更がある場合には、変更前・変更後の氏名を両方記載しておくと安心です。
まとめ
特定の人が相続放棄したかどうかは、被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所を通して無料で調べることが可能です。
相続人や被相続人の利害関係人であれば誰でも照会できますが、照会できる期間や申請に必要な書類、注意点については、各家庭裁判所によって若干異なります。
照会手続きをスムーズに進めるためにも、あらかじめ裁判所のホームページで詳細を確認しておくようにしましょう。
また、照会の結果、自分に相続権がまわってきていることが判明した場合には、速やかに被相続人の財産調査をおこない、相続するか相続放棄をするかを決定する必要があります。
借金などのマイナスの財産を相続してしまうと、今後の生活に大きな影響が出てしまいますので、相続放棄をする場合は、必ず期限内に対応をしてください。
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