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相続放棄

相続放棄する場合は家の片付けをしてもいい?適切な方法や注意点を解説

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「亡くなった方の家はどのように片付けたらよいのだろう?」といった疑問や不安を抱えている方は多いのではないでしょうか。
とくに相続放棄を検討している方の場合、間違った家の片付け方をしてしまうと、相続放棄が認められなくなるケースもあるため、注意が必要です。

本記事では家の片付けと相続放棄の関係について詳しく解説します。
亡くなった方の家を片付ける正しい方法さえ知っていれば、相続放棄に関するトラブルを避け、手続きをスムーズに進められるでしょう。

目次

家の片付けをすると相続放棄ができなくなる可能性があるため注意

相続放棄を検討している場合に最も注意しなければならない点は、亡くなった方の家を片付けたという事実が、相続を承認したと判断される危険があることです。
家の片付けをおこなうことは、法的には亡くなった方の財産を「処分・隠匿・消費」する行為とみなされ、結果的に相続放棄できなくなるリスクがあります。
相続を承認したと判断されることを「単純承認」と呼び、亡くなった方の負債を含め、すべての財産を引き継ぐこととなります。
単純承認を避けるためにも、相続放棄を検討している場合は、亡くなった方の家や遺品には基本的に手をつけないことが安全です。亡くなった方の財産に対するどんなに小さな行動も、法的な意味を持つ可能性があるため、慎重な行動を心がけてください。

相続放棄をする予定なら家の片付けは資産価値がないものに限定

相続放棄を検討しつつも家を片付ける場合には、資産価値のないものに限定しましょう。

慎重を期すのであれば、一切の片付けをしないべきですが、片付け自体が禁止されているわけではありません。重要なのは、片付ける対象に「資産価値がある」かどうかを見極めることです。そこで、片付ける際の基準や安全に行動するポイントについて以下で解説します。

片付けてもよいかどうかは資産価値の有無で判断する

相続放棄を検討している場合でも、資産価値のないものであれば処分は可能です。
具体的には、第三者から見て価値がない(市場価値がない)古い衣類や明らかなゴミなどは、片付けても法的な問題は生じません。これには形見分けも含まれます。
しかし、どの範囲までが「片付けてもよい」に該当するかは、注意深く判断する必要があります。たとえば、使い古された衣類や紙くずなどは、一般的にも資産価値はないとみなされ、片付けても問題ありません。しかし、家電や家具、趣味のコレクションなどは、使い古されていても市場価値がつく可能性があるため、処分は慎重に判断することが求められます。
一見、ゴミのように見えても、実は資産価値があったというケースは数えきれないほどあります。資産価値があるもの、資産価値があるかどうか判断が難しいものについては、基本的に手をつけないようにし、安全な範囲での片付けを心がけることが重要です。

未払いの家賃や公共料金なども支払わない

相続放棄を検討している場合は、未払いの家賃、公共料金、医療費、税金などの支払いも避けてください。Wi-Fiやスマホ代などの通信費も同じです。
亡くなった方宛の請求書を見つけ、「支払ってしまおう」と考える気持ちもわかりますが、亡くなった方名義の支払いは片付けをしたことと同じようなもので、相続を承認したとみなされるリスクがあります。
やむを得ず支払いが必要な場合は、亡くなった方の財産からではなく、自分の財産から支払いましょう。相続放棄の意志がある以上、亡くなった方の財産に対するいかなる支出も避けることが、法的トラブルを回避する上で重要です。

みつ葉グループの相続放棄サポートについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
相続放棄サポート | 相続遺言の相談窓口【みつ葉グループ】

基本的に家の片付けは相続放棄後におこなうのが望ましい

相続放棄を予定している場合、家の片付けのタイミングは非常に重要です。
資産価値がないものの処分や形見分け程度であれば、相続放棄前でも問題ありません。一方で、自己判断で家をすべて片付けてしまうと、相続放棄できなくなるリスクがあります。
したがって、急がないのであれば相続放棄後に家の片付けをすることが望ましいです。
もし、どうしても家を片付けたい、または片付けざるを得ない状況にある場合は、後述する3つの方法を参考にしてください。

相続放棄と家の片付けを並行する3つの方法

相続放棄を検討しつつも家の片付けが必要な場合は、以下のとおり適切な方法を選ぶことが重要です。

  • 専門家に相談しながら問題のない範囲のみ片付ける
  • トランクルームなどを活用して一時的に片付ける
  • 相続財産清算人を選任して片付けてもらう

相続放棄と家の片付けを並行しておこなう3つの方法について、詳しく解説します。

1.専門家に相談しながら問題のない範囲のみ片付ける

相続放棄をする前でも家の片付けをする必要がある際は、正しい知識を事前に身につけましょう。
片付けて問題のない範囲を正確に把握することが大事になってきますが、初めて相続放棄をする方が自己判断で決めるのは危険です。司法書士や弁護士など相続に精通した専門家に相談し、法的に問題のない範囲の片付けを教えてもらいましょう。遺品整理業者に相談することも有効な手段です。
こうした各分野の専門家のアドバイスを受けながら慎重に片付けを進めることが、法的トラブルを回避することにつながります。

2.トランクルームなどを活用して一時的に片付ける

相続放棄を検討している状況であっても、賃貸契約の解除要求やそのほかの事情により、亡くなった方の所有物を一時的に移動せざるを得ないケースは存在します。
このような状況下で有効な方法の1つが、トランクルームの活用です。
トランクルームを活用すれば、亡くなった方の所有物を一時的に保管し、後の相続放棄に影響を与えないよう管理できます。
また、必要に応じて一時的に自宅へ持ち帰ることも検討可能です。
しかし、トランクルームを利用する際に、亡くなった方の所有物を自己判断で処分しないようにしてください。基本的に財産を処分する行為は、相続放棄ができなくなるリスクを含みますので、一時的な措置として所有物を全てトランクルームに移すと考えておきましょう。

3.相続財産清算人を選任して片付けてもらう

相続財産清算人は、相続人が誰もいなかった場合(相続放棄で誰もいなくなった場合)に、亡くなった方の財産を清算する役割を果たします。
相続財産清算人は、2023年の民法改正により、相続放棄の前段階を含めていつでも選任可能となりました。
ただし、相続財産清算人が選任されるまでの期間については、相続財産を管理しなければなりません。この管理期間を無駄に引き延ばさないためにも、速やかに相続財産清算人の選任申立てをすることが望ましいといえます。
とくに、被相続人が所有していた家に相続人が住んでいるなど、相続財産を現に占有している場合は、相続財産清算人の選任を急ぐことが賢明です。
家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立て、裁判所の指示に従いましょう。
【参考】民法・不動産登記法等 改正概要の解説〈後編〉|東京弁護士会

相続放棄と家の片付けを並行する際の3つの注意点

相続放棄と家の片付けを並行しておこなう場合には、主に3つの注意点があります。

  • 家が老朽化しているからといって解体しない
  • 不動産や車などの修理・名義変更をしない
  • 家の片付けで判断に迷ったら保留して専門家に相談する

これらの注意点を理解し適切に対応することで、法的問題を回避して、スムーズな相続放棄が実現できるでしょう。
以下では、相続放棄をリスクなくおこなう注意点について詳しく解説します。

1.家が老朽化しているからといって解体しない

相続財産に家などの不動産が含まれる場合、老朽化が激しいと解体を検討したくなります。しかし、家の解体は登記申請をはじめとする相続手続きを終えなければなりません。
したがって、最終的に相続放棄を検討しているのであれば、解体は諦めるしかないでしょう。
解体作業をおこなってしまうと、結果的に相続放棄を断念する事態になりかねません。相続放棄の意思がある以上、亡くなった方の財産に対しておこなう一切の行動は、法的な意味を持つことを理解し、十分に注意してください。
一方で、老朽化した家を放っておくと、壁が崩れるなどすることで周辺住民に悪影響を及ぼす危険性もありますので、家が老朽化している場合は、一刻も早く相続財産清算人の選任手続きをおこなってください。

2.不動産や車などの修理・名義変更をしない

相続放棄を考えている場合、不動産や車の修理・名義変更などの行為をおこなうと、相続する意思があるとみなされてしまいます。たとえば、財産を手放す準備として、老朽化した家の修理や車の名義変更をおこなってしまうと、相続放棄できなくなってしまうのです。
家といった建物だけでなく、土地の名義も含め最終的に相続放棄を検討しているのであれば、不動産・動産の修理・名義変更といった手続きはおこなうべきではありません。

3.家の片付けで判断に迷ったら保留して専門家に相談する

家の片付けで判断に迷った場合は、いったん保留して専門家に相談しましょう。
片付けの判断を誤ってしまい、相続したものと見なされてから専門家に相談しても手遅れの可能性があります。
司法書士や弁護士といった法律の専門家は、相続に関する法的知識や経験を持っています。家の片付けにおいてどの範囲までなら問題がないか、安全に対応する方法は何か、といったアドバイスをしてくれるでしょう。法律の専門家に相談して法的トラブルに巻き込まれるリスクを減らすことで、安全かつ効率的な片付けが実現します。

みつ葉グループの相続放棄サポートについて詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
相続放棄サポート | 相続遺言の相談窓口【みつ葉グループ】

相続放棄後に家の片付けが必要な2つのケース

相続放棄したからといって、家の片付けから完全に解放されるわけではありません。
事情によっては、相続放棄後も以下のように家の片付けが必要となる特定のケースも存在します。

  • 孤独死などにより片付けざるを得ないケース
  • 相続人が賃貸契約の連帯保証人になっているケース

そのような状況に直面した際の対応方法と、注意すべきポイントについて、詳しく解説します。

1.孤独死などにより片付けざるを得ないケース

死亡理由が孤独死などであった場合は、相続放棄後も片付けが必要なことがあります。
たとえば、ゴミ屋敷状態になっている場合や孤独死後に時間が経過している状況では、家の腐敗や腐乱が進行している可能性が高いです。このような状況を放置し続けると、近隣住民との間で損害賠償問題に発展する恐れがあります。
相続財産清算人さえ選任させてしまえばよいのですが、どうしても時差が生じてしまうものです。
緊急性を要する場合に限っては、相続放棄後であっても、公衆衛生上の問題や近隣住民とのトラブルを避けるために適切な対応が求められます。
もし、こうした特殊な状況に巻き込まれてしまったら、弁護士や司法書士といった法律の専門家のアドバイスを受けながら、慎重に家の片付けに着手してください。

2.相続人が賃貸契約の連帯保証人になっているケース

相続放棄をしたとしても、相続人が賃貸契約の「連帯保証人」である場合、その地位までは失われません。
たとえば、家の腐敗や腐乱が原因で原状回復を求められた場合には、その費用を支払う義務が生じることがあります。
また、大家から賃貸契約の解除や退去を求められる可能性も高まるでしょう。
原状回復や退去に伴う費用を支払う事態は避けられないかもしれませんが、財産を処分すると相続の意思があると捉えられないため、物品を処分せずにトランクルームなどを利用するなど、相続放棄への影響を考慮した上で行動してください。

まとめ

本記事では、相続放棄を検討中の方が直面すると考えられる、亡くなった方の家の片付けにおいて重要なポイントを解説しました。
相続放棄を検討している場合、家の片付けは法的な意味合いを持つことも多く、資産価値のある財産の処分や、亡くなった方名義の財産の使用、名義変更などは避けなければなりません。一歩間違えると、相続放棄ができなくなる可能性があるため、注意が必要です。
相続放棄を検討しており、被相続人が住んでいた家の片付けに困っている方は、司法書士法人みつ葉グループまでお問い合わせください。トラブルなく相続放棄を終えることができるよう、司法書士がサポートいたします。

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