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遺産相続で成年後見人が必要なケースは?選ぶ流れや費用、注意点を解説

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自分の親が高齢者になると認知症などによって判断能力が低下していき、財産管理能力が不十分となる可能性も高いです。財産管理ができなければ、自身の生活だけでなく、同一生計で生活している人にも影響を及ぼしてしまうため、成年後見人制度を利用している方もたくさんいます。

成年後見人制度を利用することで財産の管理と運用を任せることができ、安心して相続することにもつながります。そこで今回、成年後見人に着目し、概要と役割、遺産相続時に必要となるケースを紹介します。これから終活を始める人や、相続を控えている人はぜひ参考にしてください。

目次

遺産の相続人となる成年後見人とは

成年後見人とは認知症や高度障害となった人の支援や補助をする人を指します。高齢者になると認知症になる確率も高くなり、生活する上で日常生活が困難になるケースも多いです。

またオレオレ詐欺や振り込め詐欺だけでなく高齢者に高い商品を購入させる被害なども増加しているため、財産を守るためにも成年後見人は重要なサポート役となります。また本人の心身状態などが良くない場合は、必要な医療や介護サービスを受けられるように補助するのも成年後見人の一つの役割です。

入院手続きをしたくても認知症などの場合は本人だけではできないケースも多いでしょう。その場合は成年後見人が本人に代わって手続きを行うことが可能となります。ただし手術の同意や治療内容の判断などは成年後見人の役割範囲外であるため注意が必要です。

成年後見人は家庭裁判所から選任された人がなることができます。ただし下記の条件にあてはまる人は成年後見人にはなれません。

  • 未成年者
  • 家庭裁判所で解任された法定代理人、保佐人や補助人
  • 破産者
  • 被後見人(支援や補助を受ける人)に対して裁判したことがある人(その人の配偶者や直系血族も含む)
  • 行方が分からない方

未成年者や破産者などの財産管理能力が乏しいとされる人は成年後見人になることはできません。過去に裁判所で解任された方や、被後見人に対して裁判したことがある人なども家庭裁判所では認めていません。

一般的には家族や親族の方が成年後見人になるケースが多いです。親族であれば成年後見人の立場とは別に治療内容や手術の同意に関しても判断可能です。また弁護士などの専門家が後見人に選任される場合もあります。その場合は月々の費用が発生するため注意してください。

成年後見人の役割

成年後見人の役割は大きく分けて「財産管理」と「身上監護」の2つに分かれます。具体的な作業内容は下記の表の通りです。

財産管理 身上監護
預貯金の入出金手続き
有価証券の管理
公共料金や税金の支払い
不動産の管理
相続手続き代行
税務申告手続き
病院の入院契約
高齢者施設への入所契約
  • 預貯金の入出金手続き
  • 有価証券の管理
  • 公共料金や税金の支払い
  • 不動産の管理
  • 相続手続き代行
  • 税務申告手続き
  • 病院の入院契約
  • 高齢者施設への入所契約

成年後見人に選ばれた人は、財産がいくらあるかの「財産目録」と年間の収入と支出を管理する「収支状況報告書」の作成が義務付けられています。

裁判所への提出は義務付けられていないものの、不適切に運用していると発覚した場合は、裁判所に提出を求められることもあります。

遺産の相続で成年後見人が必要なケース

  • 遺産分割協議を行う
  • 相続税を申告する
  • 納税

遺産相続においても成年後見人が必要となります。相続が発生した後は、相続人同士で遺産分割協議を行い、財産の分割方法と割合を決めます。

しかし遺産分割協議は、相続人の1人に認知症などの判断能力が乏しい方がいると行うことができません。つまり、いつまで経っても遺産分割協議が完了せず、財産の分割ができないだけでなく、相続税の申告と納税ができません。

その場合、相続税の他に延滞税や無申告加算税などのペナルティが課せられます。そこで成年後見人が付くことで、認知症の方に代わって遺産分割協議に参加できるようになります。

相続手続き同様、相続税の申告がある場合は成年後見人が代わりに申告書に押印して提出します。また納税に関しても同様です。相続を控えていて、推定相続人の中に判断能力が乏しい方がいる場合は、成年後見人を設定しておいたほうがよいでしょう。

成年後見人が相続に不要なケース

先ほどは相続手続きにおいて成年後見人が必要である旨を伝えましたが、例外として下記の2ケースは不要となります。

  • 遺言書がある場合
  • 法定相続分で不動産を相続する場合

遺言書がある場合

遺言書通りに遺産分割協議がまとまれば、成年後見人が不要となります。遺言書は被相続人(亡くなった方)の意思を示した書類です。一般的には遺言書通りに遺産を分割するため、遺産分割協議を行いません。

ただし、相続人全員の合意により、遺言の内容とは違う分け方をすることも可能です。その場合は当然遺産分割協議書を行う必要があります。

【関連記事】遺言書の保管は制度を使って法務局へ|紛失や改ざんから守る方法

法定相続分で不動産を相続する場合

法定相続分で相続する場合は、成年後見人などを選任しないで相続手続きをすることもできます。成年後見人を設定しないで相続する場合、相続財産は法定相続分で按分(基準に従って割り振ること)することになります。

一般的には「遺産分割協議」や「遺言書」に基づいて財産割合を定めます。しかし遺言書もなく、協議も行わない場合、法定相続分の割合で財産を継承します。

法定相続分は法定相続人や人数によって異なります。具体的な例は下記の表の通りです。

相続人 配偶者 子供 兄弟姉妹
配偶者のみ 100%
子供のみ 子供1人の場合は100%(2人なら1/2ずつ)
親のみ 両親は50%ずつ(片親は100%)
兄弟姉妹のみ 兄弟の人数に合わせて按分(2人なら1/2ずつ)
配偶者と子供 50% 50%を子供達で按分(2人なら1/4ずつ)
配偶者と親 2/3 1/6ずつ(片親は1/3)
配偶者と兄弟姉妹 3/4 25%を兄弟たちで按分(2人なら1/8ずつ)

しかし法定相続分の割合で財産を継承したとしても、実務上は、遺産承継ができない事例も多いです。特に預貯金や有価証券など、相続が発生した時点で凍結されたものに関しては、金融機関や証券会社などの多くは遺言書や遺産分割協議書がなければ、口座の解約はできないと定めているケースがほとんどです。

また、法定相続分で不動産を相続した場合は、名義変更登記手続きは相続人の一人からでも申請できるため、成年後見人は不要となります。ただし、他の相続人が行ってくれない場合は不動産を相続することはできないという点も注意すべきところです。

成年後見人を選ぶ手続きの流れ

ここでは成年後見人を選ぶ手続きの流れについて解説します。

1.申請する人と場所を確認する

はじめに申請する人と家庭裁判所の場所を確認します。申請できる人は本人・配偶者・4親等内の親族となり、本人の住所地を管轄する家庭裁判所に申立てを行います。

2.診断書等の必要書類を揃える

申立ての書類の作成の他に必要書類の準備を行います。必要書類は主に下記の通りです。

  • 診断書
  • 申立事情説明書
  • 親族関係図
  • 財産目録
  • 収支状況報告書
  • 成年後見人候補者事情説明書
  • 親族の同意書
  • 本人の戸籍・住民票
  • 成年後見人候補者の住民票
  • 本人の成年後見人等の登記がされていないことの証明書

3.家庭裁判所へ書類を提出する

申立書と必要書類の準備ができた後は家庭裁判所へ書類を提出します。この際郵送でも問題ありません。

4.面接が実施される

家庭裁判所へ書類を提出した後は、家庭裁判所の調査官が下記の方と面接を行います。面接内容は成年後見人に関する説明と申立てした理由、生活状況や経済状況などが聞かれます。

  • 申立てした人
  • 本人
  • 後見人候補者
  • 親族

成年後見人にかかわる人全員が面接の対象です。ただし場合によっては医師による精神鑑定も行われることもあります。面接が完了した後は裁判官が成年後見人制度の検討という審理を行います。

5.審判により成年後見人が決定する

審判の結果成年後見人が必要となると、家庭裁判所から適任者が選任された通知が届きます。早ければ審理から1週間前後となりますが、長ければ1か月〜2か月かかる場合もあります。

6.後見の登記が行われる

審判が完了した後は後見登記を行います。後見登記は裁判所で手続きしてくれます。おおよそ2週間前後で登記完了となります。完了した後は法務局で登記事項証明書を取得することで第三者に成年後見人であることを示すことが可能となります。

相続発生後の遺産分割協議などで使用するため、取得しておきましょう。

成年後見人の選任にかかる費用

成年後見にかかる費用は下記の表の通りです。

申立て手数料 収入印紙800円
登記手数料 収入印紙2,600円
送達費用 3,270円

上記の他に医師の鑑定が必要となった際は、5万円〜10万円程度の費用が発生します。また成年後見人を弁護士などに依頼する場合、月々2万円〜3万円程度の費用が発生します。

成年後見人が遺産を相続する注意点

相続対策として成年後見人を選任する場合は2つの点に注意しなければいけません。

  • 死亡するまで辞められない

成年後見人は一度選任されると辞めてもらうことはできません。原則本人が死亡するまで職務を全うする必要があるため「途中で嫌になった」としても辞めることはできません。

また成年後見人が弁護士などの専門家の場合、毎月の費用を支払い続けなければいけません。将来的に本人が老人ホームや介護施設に入ると月々の費用負担の割合が大きくなるデメリットもあるでしょう。

そのため成年後見人を依頼する際は、相続という観点だけでなく支出面も考慮する必要があります。

  • 財産を動かすことに制限がかかる

成年後見人制度を利用すると、本人の財産を動かす際に制限がかかるため、相続税対策の一つである生前贈与ができなくなる場合もあります。生前贈与とは贈与者が受贈者に対し、財産の一部を贈与することです。そのため贈与者は本人の財産を減らすことができ、相続税対策になります。

しかし成年後見人制度では株式や不動産などの贈与による名義変更などは原則不可となります。したがって制度を利用した後は相続税対策が難しくなるデメリットもあると注意しておく必要があります。

【関連記事】遺産分割協議書を自分で作成する方法|作るときの注意点も解説

まとめ:成年後見人を付けて円滑な遺産相続を

今回、成年後見人の概要と役割、遺産相続時の必要性について解説してきました。成年後見人制度は本人の判断能力が低下した際、財産の運用と管理、本人の生活を守ってくれる制度でもあります。

さらに本人が相続人となった場合、本人に代わって相続手続きや相続税申告、納税もしてくれるメリットがあります。ただし本人の財産を動かすことに制限もかかるため、利用する際は十分検討する必要があります。

より詳しく知りたい方は弁護士や司法書士などの専門家に相談してみましょう。

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