相続税
土地の名義変更の方法と必要書類|費用や手続きの流れまで解説
相続や売買、贈与などによって土地の所有者が変更となる際は名義変更をしなければいけません。名義変更しないままにすると、土地を所有していることが第三者に主張できないこととなり、運用することができません。
また前所有者にも迷惑をかけてしまうことにもつながるため、土地の名義変更の必要性に関してはあらかじめ理解しておく必要があります。そこで今回、土地の名義変更に着目し、必要性や変更方法と流れ、必要書類について紹介します。
これから土地の名義変更を控えている方はぜひ参考にしてください。
目次
土地の名義変更とは
土地の名義変更とは登記簿に掲載された不動産の所有者を切り替えることを指します。日本のすべての不動産には所有者が誰なのかを示した登記簿が登録されています。
自動車などは車検証を見れば所有者が確認できるのと同様に、不動産では登記簿で確認することができます。登記簿は国の機関である法務局で管理されています。
そのため名義変更をする際は法務局で手続きを行います。名義変更をしなければ自身の所有地とは主張できず、活用できなくなります。では具体的にどのような必要性があるのでしょうか。次の項で詳しく解説します。
名義変更の必要性
土地の名義変更をしないままにすると、不動産の所有者が前所有者のままだと思われてしまいます。そのため土地に戸建てや賃貸住宅などの建築ができないだけでなく、売買することも不可能となります。また過去には名義変更をしないまま詐欺にあった事例もありました。
前所有者から土地を買い、名義変更を第三者に任せたが、実際名義変更手続きがされず売買代金だけを失ったという事例です。前所有者は名義変更手続き中と偽り、他の所有者に売却してしまい連絡がつかなくなりました。このように名義変更は必ず行わなければいけません。
また名義変更しないままにすると固定資産税も前所有者へ課せられます。固定資産税は1月1日時点で不動産を所有している方に課せられます。
名義変更しないまま1月1日になると、納税通知書が前所有者へ届いてしまいます。さらに土地を相続したものの、名義変更をせず被相続人(亡くなった方)のままにしておくと売却なども行うことはできません。
その際は相続人同士で遺産分割協議を行い、土地の相続人を確定させる必要があります。土地を売買・相続した際は速やかに名義変更をしましょう。
土地の名義変更は自分で手続きできる
土地の名義変更は法務局で自分で行うことが可能です。ただし複雑な手続きと専門的な知識が求められるため、多くの方は司法書士に依頼しています。
司法書士や土地家屋調査士へ依頼した場合、数万円〜数十万円の費用が発生しますが、不動産になじみのない方にとっては聞いたことのない用語も多数出てくるため、専門家に登記を任せることが現実的でしょう。
名義変更にかかる時間の目安
土地の名義変更にかかる時間は、申請してからおおよそ2週間前後となります。法務局が混んでいない場合は1週間前後で完了することもあります。一方で1月・2月・3月は賃貸住宅の完成時期でもあるため、法務局が混雑し登記の日数が遅れる場合もあることから一概に約◯日とは言えません。
また自身で名義変更手続きを行うと申請書類に不備があれば再度修正して申請し直さなければいけないため、より日数がかかってしまいます。司法書士に依頼することで書類不備という懸念点はなくなるため、より確実に名義変更を完了することが可能です。
土地の名義を変更するタイミング
ここでは土地の名義を変更するタイミングについて解説します。名義変更をする際は土地の「売買」「相続」「贈与」「財産分与」の4つです。それぞれのタイミングは次の表の通りです。
名義変更が必要な事由 | 名義変更のタイミング |
売買 | 土地の売買契約時に買主と売主が司法書士へ登記申請を依頼します。その後決済に合わせて司法書士が登記申請をするのが一般的です。司法書士は土地の仲介をする不動産会社が選定することが多いため、売主と買主は必要書類の準備と署名捺印だけで済みます。 |
相続 | 相続人同士で遺産の分割割合を記した遺産分割協議書の作成後に登記申請を行います。相続関係を証明するため戸籍を提出する必要があります。 |
贈与 | 贈与契約書を贈与者と受贈者で作成し、署名捺印した後に名義変更の申請を行います。 |
財産分与(離婚) | 離婚前に書類を準備し、離婚後に申請するのが一般的です。離婚後に申請書類を準備するとなる場合、相手と連絡が取れないなども起こりうるからです。 |
名義変更の手続きのタイミングは事由によって異なります。しかしどの事由も必要書類がありますので、あらかじめ用意しておきましょう。
土地の名義変更の方法と流れ
土地の名義変更は司法書士に依頼する場合と自身で行う場合の2種類あります。司法書士に依頼する場合は委任状に署名し、必要書類の準備だけで完了します。しかし自身で行う際は下記の手順で行います。
1.法務局で登記申請書を受け取る
土地を管轄している法務局で登記申請書類を取得します。もしくは法務局のホームページから申請書類をダウンロードすることも可能です。どちらの方法でも問題ないため、取得しやすい方法を選びましょう。
2.必要な書類を揃える
申請書を取得した後は土地の名義変更を行うための必要書類を準備します。必要書類は後ほど紹介しますが、役所で取得しなければいけない書類もあるため、事前に理解して用意しておきましょう。
3.法的書類を作成して捺印する
必要書類の準備ができた後は、申請書類の作成を行います。例えば下記の内容を書類に記入します。
- 登記の目的
- 登記原因日付
- 権利者及び義務者又は申請人
- 登記すべき事項
- 課税標準金額
- 登録免許税
- 添付書類の名称 など
上記の項目を見てどのような内容か分からない方も多いのではないでしょうか。そのため自身で手続きを行う方は少なく、専門家へ依頼する方が多くなっています。
4.管轄の法務局へ申請する
書類の準備ができた後は名義変更する土地を管轄する法務局で申請します。申請書類と必要書類を提出しましょう。申請が完了した後は登記完了証が発行されます。
土地の所有者の項目と、名義変更した事由を確認しましょう。売買や相続、贈与などが明記されています。
【関連記事】不動産の名義変更とは?費用や時間、自分でできるのかを解説
土地の名義変更に必要な書類
土地の名義変更を行う際は、事由によって必要書類が異なります。ここでは4つの事由に合わせた必要書類を紹介します。
売買の場合
- 売買契約書又は登記原因証明情報
- 登記識別情報(登記済権利証)
- 印鑑証明書(発行3カ月以内)
- 固定資産評価証明書
- 住民票
- 身分証明書
相続の場合
- 遺産分割協議書または遺言書
- 相続関係を証明する戸籍一式
- 固定資産評価証明書
- 住民票
- 身分証明書
贈与の場合
- 贈与契約書又は登記原因証明情報
- 登記識別情報(登記済権利証)
- 印鑑証明書(発行3カ月以内)
- 固定資産評価証明書
- 住民票
- 身分証明書
財産分与の場合
- 離婚協議書・財産分与契約書
- 戸籍謄本
- 登記識別情報(登記済権利証)
- 印鑑証明書(発行3カ月以内)
- 固定資産評価証明書
- 住民票
- 身分証明書
また区画整理地などの場合は、上記の書類の他に仮換地証明書や従前地の登記識別情報などさまざまな書類が必要です。詳しく知りたい方は司法書士に確認することをおすすめします。
土地の名義変更に必要な費用
土地の名義変更を行う際は、司法書士報酬額や必要書類の取得費用が発生します。司法書士への報酬料は数万円〜数十万円です。
ただし名義変更を行う場合、関係人の数や土地の筆数、大きさなどによって費用は異なるため、名義変更を依頼する際は見積依頼をしてから検討してもよいでしょう。また名義変更をした際は下記の税金が課せられる場合があります。
売買 | 売却主が売却利益を出した場合は譲渡所得税が課せられる。 買主には不動産取得税が課せられる。 |
相続 | 土地を相続した人には相続税が課せられる。ただし課税対象者となった場合のみ。 |
贈与 | 110万円以上の評価額がある土地を贈与した場合は受贈者に対し贈与税が課せられる。 |
財産分与 | 分与方法によっては「贈与税」「不動産取得税」「譲渡所得税」が課せられる。 |
これらの税金は必ずかかるとは言い切れません。そのため名義変更をする前に税理士に確認してもらうことをおすすめします。
土地の名義変更にかかる税金
先ほど紹介した税金の他に、名義変更をした際に必ず課せられるのが登録免許税です。登録免許税は、土地の名義変更や金融機関から借入をして担保提供をする際に課税されます。
土地の登録免許税は固定資産税評価額に税率を掛けた金額となり、名義変更方法によって異なります。詳しくは下記の表のとおりです。
名義変更方法 | 登録免許税 |
売買 | 固定資産税評価額の1.5%(令和5年3月31日まで) |
相続 | 固定資産税評価額の0.4% |
贈与 | 固定資産税評価額の2% |
財産分与 | 名義変更方法によって異なる |
この際注意しなければいけないのは、建物の登録免許税は別ということです。土地だけでなく建物も建っている場合もあるでしょう。建物も土地同様固定資産税評価額に税率を掛けた数値であり、「0.4%~2%」の間となります。
土地の名義変更の注意点
土地の名義変更を行う際は下記の2点に注意しましょう。
- 税金の計算をしてから行う
土地の名義変更を行う際は事前に課せられる税金の計算をしておくことに注意しなければいけません。土地の名義変更は登録免許税だけでなく、手続き事由によっては他の税金が課せられます。
土地などの不動産は評価額も高く、高額な納税額になりかねません。土地の名義変更をしたものの高額納税通知が届き驚く方も少なくないため事前に納税額を計算していたほうがよいでしょう。
- 書類や手続きの抜け漏れに気を付ける
土地の名義変更を自身で行ったものの、一度間違えて登記してしまうと、再度登記となるため、司法書士や土地家屋調査士などの専門家に依頼することをおすすめします。間違えた登記をすると単純にもう一度行うだけでなく、登録免許税も再度課税されます。
また譲渡所得税や不動産取得税、贈与税などの課税対象にもなるため決して間違えてはいけません。さらに申請書類に不備があり、面倒と感じることから結局名義変更しなかったというケースも多いです。
そうならないように、専門家に依頼し一度の手続きで完了させるようにしましょう。
【関連記事】不動産を遺産分割する方法とそのポイントを解説
まとめ:めんどうな土地の名義変更は専門家へ
今回は土地の名義変更の方法と必要書類について解説してきました。土地の名義変更は所有者が変更となった際に必ず行わなければいけません。
名義変更を行わないままにすると土地の運用はおろか、前所有者に迷惑をかけてしまう可能性も高くなります。そのため土地を売買や相続する際の名義変更は、あらかじめ理解してから手続きを行うようにしましょう。
また名義変更は司法書士に依頼する方がほとんどですが、必要書類は自身で用意しなければいけません。スムーズに名義変更するためにも手順や必要書類をあらかじめ準備しておくことをおすすめします。
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